第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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『ちょっと簡単だったかな?』 そう言って優しく笑った瀬山さんは、鎖の上から羽の軽さで飛び降りた。 そして転がる僕の横で膝を着き、片手だけで印を結ぶ。 「え……両手を使わないんですか?」 思わず聞いてしまった。 だってさ、印は必ず両手で結ぶものだと思ってたんだ。 水渦(みうず)さんの動画にも、片手の印は入ってない。 『両手も片手も。人によってだよ。何をしたいかで使い分けるんだ』 瀬山さんがそう言い終えてすぐ、僕の身体は自由になった。 解けた網は印の片手に吸い込まれ、やがて広げた手のひらに珠となって現れた。 「わぁ……キレイ、もしかして……その珠は鎖の親玉ですか?」 『ああ、そうだよ。岡村さんの親玉を網に変え、もう一度親玉に戻したんだ』 その珠は女性の拳くらいの大きさで、まん丸の艶々でネットで見た真珠にそっくりだった。 「そうなんだ……でも視た目がぜんぜん変わりました。僕が構築した親玉はもっと大きかった。なのにこれはすごくちっさい」 僕の親玉は子猫くらいの大きさ。 それに比べたらうんと小さくなっている。 『ああ、これはね、戻した時のついでに、私が使いやすい大きさに作り替えたんだ、要するに再構築。ねぇ、岡村さん。”構築”と”再構築”の違いってわかる?』 ク、クイズだ! これはレジェンドクイズだよ! って、構築と再構築の違いくらいなら僕にもわかるよ。 今頃どこかで先代も待ってるだろうし、時間短縮、当てにいっちゃっていいかな? 「構築は霊力(ちから)でもって、イチからモノを作る事。再構築は……頭に再がつくくらいだ。すでに出来上がったモノを霊力(ちから)でもって作り直すって事ですよね」 これはもう霊媒師としての知識というより国語の問題だ。 『うん、正解。では質問です。岡村さんは再構築をした事はある?』 「僕ですか……? ん……そう言われてみたらないかもしれない。さっきの鎖を構築した時、最初から鎖を作るつもりで霊力(ちから)を溜めましたもん」 『そうですか、わかりました。では、岡村さん以外の霊媒師で再構築が出来る人はいるかな?』 僕以外……? 「そりゃあ、うちの先輩方は手練れ揃いですからね。再構築の1つや2つ誰でも出来ますよ……って、あれ……? そういや視た事あったか……? や……あるけど忘れてるだけかな……よく思い出しますから少し待って、」
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