第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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時間にしたらほんの数瞬。 瞬く間に自分自身の再構築をしてみせた瀬山さんに、僕は呆然とするしかなかった。 サラサラの艶の黒髪、スベスベとした白い肌、若い姿の瀬山さんは僕に向かってこう言った。 『なぜ私が再構築の話をしたかというとね、これから……悪霊達の元に行くでしょう? 当然、戦う事になる。その時にね、この再構築が役に立つと思うんだ』 そ、そうだった。 視せられた霊力(ちから)に驚くばかりで、元々の修行内容を忘れていたよ。 ____そこは生者にも死者にも害を成す、 ____凶悪な悪霊達がウジャウジャいるの、 ____ぜんぶ祓うまでは帰れない、 ____何日かかるかわからない、 先代はこう言っていた。 これから行くのはハードな現場だ。 悪霊相手に再構築が役に立つというのはどういう事だろう? 『平ちゃんから聞いたけど、これまでに岡村さんが行った現場は4か所。そのうち1か所は戦闘中心の悪霊相手だったんだよね?』 「そうです。百体以上の悪霊達に囲まれて……僕は先輩霊媒師と一緒に戦いました」 『その悪霊達は特別な霊力(ちから)を持っていた?』 「霊力(ちから)……? いえ……そんな感じじゃなかった。襲われたけど、シンプルに殴る蹴るの……いわゆる”喧嘩”でした。……えっと、幽霊に特別な霊力(ちから)を持つ人なんているんですか……?」 『いるよ。ほら、私や平ちゃんも持ってるでしょう?』 「あ、確かに。で、でもそれは、瀬山さんも先代も元々霊媒師だから。一般人が亡くなって悪霊になったからって、霊術が使えるようにはならないと思うんです」 『うん、普通はね。でも……悪霊達の中に、誰か一人でも元霊力者がいたとしたら? その元霊力者が一般人の悪霊達に霊術を教え込んだとしたら? 私が藤田さんに霊術を教えたように、』 「ユリちゃんのお爺さん……」 そうだった。 生前は林業、霊能者でもなんでもなかったお爺さんは、死して尚、大事な孫娘を守りたいと、黄泉の国で瀬山さんの元で修行をしてる。 ユリちゃんの結婚で、両家顔合わせの時には、たどたどしいながらも印を結び、僕の身体を乗っ取る事に成功したんだ。★ 『藤田さんは大変な努力家です。これまで一日たりとも修行を怠った事がなく上達も早い。今では下手な霊媒師よりも技術がある。……彼も、元一般人ですがね、』 む、むぅぅぅぅ……! 下手な霊媒師よりも技術がある下手な霊媒師よりも技術がある下手な霊媒師よりも技術がある下手な霊媒師よりも技術がある……だと……? それって、 お爺さん>>>>>>>>>>僕 くらいになっちゃってるのかな……くぅ! 負けてられないぃ! 『おそらく今回の悪霊達は、岡村さんが戦った悪霊達とは違う。向こうも霊力(ちから)でもって襲ってきます。丸腰じゃなく、武器を構築してね』 ★ユリちゃんのお爺さんがエイミーの身体を乗っ取ったシーンがココです。 https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=472&preview=1
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