第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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◆ 『違うっ! そうじゃないっ! 瞬時にイメージして!』 容赦のない怒声が響く。 深夜の山の中。 かれこれ長い時間、僕は瀬山さんに再構築の訓練を受けていた。 一度構築したモノをまったくの別モノに作り替える、これがどうしても出来ない。 やり方を口で説明されたが、まったくもってピンとこない。 ____イメージするんだ、 ____構築の済んだ物を次は何に作りかえたいのか、 ____強く、強く思い描くの、 手練れの霊媒師はたったこれだけの説明で再構築が出来るのか?  否、いくらなんでも無理だろう。 だって言ってた。 ”瀬山の家で再構築が出来る霊媒師は一人もいなかった”と。 日本で一番チカラを持っている、瀬山の霊媒師でさえ出来ないんだ。 それなのに、僕みたいな駆け出しがすぐに出来るようになるとは思えない。 でもね、そんな事は百も承知。 それでも意地でも習得したい。 大福を守りたい、大事な人を守りたい、あわよくば自分自身も守りたい。 『だからっ! キミはこの霊矢をどうしたいの!?』 訓練中の瀬山さんは鬼だった。 ほんわりとした話し方がウソのように語気が強い。 だけどそんな事気にする余裕が僕にない。 「拘束具にしたい! さっき瀬山さんがそうしたみたいに、網でグルグル巻きにして動けないようにしたいんだ!」 『じゃあイメージして! キミは二回も縛られたじゃない! それを思い出して! 網はどうなってた? 身体に食い込み指一本動かせなかっただろう? 頭の中にそれを浮かべて!』 「そんなのとっくに浮かべてます! なのに変化してくれないんだ!」 距離を取った向かい合わせ、瀬山さんの足元には僕の霊矢が地に刺さる。 それに向かって放電し、僕と霊矢は接続済だ。 あとは霊矢をどう変化させたいのか、強くイメージすれば再構築が始まると言うのだが、焦る気持ちと裏腹に再構築は一向に始まらない。 クソッ! 瀬山さんを網で巻いてミノムシにしてやりたいのに! 『泣き言は後で聞く! ”変化してくれない”じゃない! 変化させるんだよっ!』 どこかで聞いた言い回しだ……と思ったものの、考えてる余裕はない。 「瀬山さん、ちょっと待って! もう一回だけ説明してください! やり方は聞いたけど、頭でそれが理解出来ない、理解出来ないやり方を手探りでやってみたって成果は出ない! 理解力の無い僕にもう一回説明をお願いします!」
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