第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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◆ テクテクテクテク。 瀬山さんと大福と僕は、だだっ広い平地を歩いていた。 地面は土と草、それとうっそうとした大木が。 そうね、明け方までいた、緩やかな山の地をそのまま平たくした感じの場所。 人なんて一人もいない。 だが空はある、陽の光で明るいし。 でもな、雲や鳥は見当たらない。 ココ、どこなんだろう? 山の中とは思えない。 やっぱり霊の持つフィールドなのかな。 前に……ユリちゃんのお母さん、貴子さんに初めて会った時、アパートの中にいたはずが、いつの間にやらだだっ広い、暗くて冷たい場所にいた。 マジョリカさんの現場でもそうだった。 ジャッキーさんのオウチのリビングにいたはずが、似てるけど別の空間に立っていたて、そこで偽ジャッキーと戦ったんだ。 それと……同じなのかな? まぁ、おそらくそうだろうけど、今回めちゃくちゃ広くない? 地の果てがまるで視えない。 歩き始めて10分経つか経たないか。 目線の先に、若い男性が両手をぶんぶん振っているのが視えた。 『ショウちゃーん! 岡村くーん! 大福ちゃーん! コッチコッチー!』 容姿は視慣れないけど先代だ。 墨の色の短髪に、鋭い目付き、薄めの唇はクールなのに、仕草はいつものプリティ系。 僕達が来た事が嬉しいのか、ピョンピョンその場を跳ねている。 『平ちゃーん! お待たせー! 岡村さん、すごく頑張ったんだよー! いっぱい褒めてあげてー!』 やだ! 褒めてあげてだなんてー! 瀬山さん、僕が褒められて伸びるタイプだと気が付いちゃったのかな? ふふふ、嬉しいぃ! 『そうなのー? 岡村君、頑張ったんだぁ! えらかったねぇ! いっぱい褒めてあげるから早くおいでぇ!』 視た目はすこぶるクール男子だけど、話し方はいつもの先代。 もう……会いたかった、めちゃくちゃ会いたかったー! 「先代ーーー! 今! すぐっ! 行きまーす!」 『にゃにゃにゃーーーーーん!』 僕と大福はほぼほぼ一緒に走り出した。 先代まで目測たぶん50メートル、歩いて行くのがもどかしい。 早くワシャワシャ撫ぜられたいと、中年にあるまじきコトを思いながらダッシュした。 大好きな先代に近くなる、あと少しで辿り着く、と思った数メートル手前。 両手を広げて僕を待つ先代の後ろに、おかしなモノを視た。 なにアレ……? 早く胸に飛び込みたい(まるで恋人だな)、と思うのに、後ろが気になって仕方がない。 最初はね、先代の後ろはやけに霧が濃いなと思ったんだ。 霊の為の霊による霊が作るこのフィールドは、天候にも恵まれ空は明るい。 湿度も低くて過ごしやすいにも関わらず、なぜに霧が発生するのか。 しかも先代の後ろだけ。
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