2366人が本棚に入れています
本棚に追加
『岡村君、もう少しゆっくりキミを褒めてあげたかったんだけど、そうもいかないみたい。さっそくだけど修行を始めようか、』
「修行……ですか? もちろんお願いします! でも……山にいる悪霊達は先代と瀬山さんで封じてしまった。修業のメニューは変更という事でいいですか?」
だってそうだろ。
最初に何体いたのか知らないけども、すべての悪霊は壁の向こうだ。
これじゃあ戦いようがない。
『メニュー変更はありません。岡村君には予定通り、悪霊達と戦ってすべてを祓ってもらいます。私とショウちゃんは少しだけ加勢するつもりですがメインは岡村君だ』
ニコニコと笑う先代、僕は首を傾げてこう聞いた。
「という事は、悪霊達は他にもいるんですね?」
『ううん、いないよ。壁の向こうにいるだけだ。大丈夫、修行は出来るよ。だって今から、この結界を解くのだから』
眩しいくらいの笑顔とは正反対、それを聞いた僕は血の気が引いた。
わざわざ解くの?
いや、だって、せっかく……言いかけた僕の前で、先代は二本の指を立て、それを口元に持ってくる。
そして言霊。
小さな声で聞こえないけど、言霊を唱え終えたという事はわかった。
だってそうだ。
延々広がり果ての視えない霧の壁。
それが一気に飛散した。
あぁ……解いちゃった……なんて思いながら、徐々に晴れる視界の先に映ったモノ。
僕はそれを視て絶句した。
そこには、たくさんの男達がいた。
若者も年配者もどちらもだ。
「なんてこった……」
絶望的な気持ちになった。
そこにいる悪霊達は、全員同じ服を着ていたんだ。
白いシャツにグレイのパンツ。
そう、先代と瀬山さんとお揃いの、”日本で一番チカラを持っている霊媒師軍団”、瀬山の霊媒師が着る制服を。
この先なにがあっても、絶っっっ対に瀬山を敵に回したくないって思ってたのに、どこかで会ったら是非とも友好関係を結びたいとも思ってたのに。
どうしたって叶わない状況だった。
最初のコメントを投稿しよう!