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霧の晴れた果てない大地。
そこに立つたくさんの男達。
ちゃんと数えてはないけど、ぱっと視、30人はいそうな感じだ。
ここにいる全員が、先代や瀬山さん程じゃないにしても、レベルの高い瀬山の霊媒師達なのだ。
そう、少なくとも僕より手練れに違いない。
マジか……悪霊達を全員祓え、これが今回の修行だけども、正直僕はただの悪霊だと思ってたんだ。
マジョリカさんの現場にいたような、人相と口の悪い、ごくごく普通の悪霊達だとね。
予想は見事に外れた。
こんなの聞いてない。
てか瀬山さん、昨日のうちに言ってくれたら良かったのに。
そしたらさ、それなりの覚悟も出来たんだ。
クソッ……この修行、あまりにハードじゃないか?
____我々昭和初期生まれの人間は、
____無理してナンボの根性論者、
____若い子には申し訳ないけど、
____今回年寄りのやり方に合わせてちょうだい、
先代はこう言っていた。
うん……言ってたな。
てか……てか……昭和、強ぇぇぇぇぇ!
平成生まれのこの僕は、ついていけるか今更ながら不安です。
本音は怖くてたまらない。
瀬山の霊媒師達は目立って話す者はいなかった。
能面か不機嫌か。
そのどちらかの表情で、先代と瀬山さんを交互に視てる。
……
…………と、思ったけど……ん?
ごくごく小さな声だけど、この人達、何か言ってるみたいだ。
布を擦るような小さな声が微かに漂ってくる。
何を言ってる……?
気になって耳を澄ましてよく聞くと、
もちまる……もち丸……持丸……
これは先代の名前だ。
なんだよ視たまんまのコト言ってるのか。
ひねりがないな。
他にも何か言っている。
僕は更に耳を澄まして聞いたんだ。
じゅう……ジュウ……シンジュ……しんじゅう……
最初は……なんの事だかわからなくって考えたんだ。
しんじゅ……真珠……?
瀬山さんが霊力を使う時、固定カラーは優しい真珠の色だ。
その事を言ってるのか?
でも……なんか違う。
もっと嫌な感じがする。
小馬鹿にしたような、蔑むような、負の感情が伝わってくる。
そう思って考えて、小さな声を繰り返し聞くうちに分かってしまった。
コイツら……”心中”って言ってるんだ……!
それって瀬山さんの事か?
瀬山さんの過去の事を言ってるのか?
名前ですら呼ばないのか?
腹の底にズシリと重たい物が溜まる感じがした。
なんだよこれ。
瀬山の霊媒師達は無表情から一変、”心中”と呟きながら微かに口を歪めてる。
コイツら……さっきまで無表情だったクセに……笑ってるんだ。
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