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「先代、瀬山さん、ごめんなさい。もう落ち着きましたから」
かぁっと頭に血が上り、怒りに任せて霊矢を撃った。
そのせいで周りが視えていなかった。
あんまり、ないんだけどな……こういうの。
超平和主義なのに、喧嘩も当然好きじゃないのに。
なのに我を失ったのは、瀬山さんと僕が重なってしまったからだと思うんだ。
瀬山さんと僕は良くも悪くも希少の子。
違うのは生まれた場所と時代だ。
霊力のレの字もない平凡な家庭に生まれ育った僕は、自分にそんな霊力がある事も知らず、家族や友人と笑い合って生きてきた。
行きたい学校に行かせてもらい、アルバイトをし、好きな女の子と付き合ったりもした。
だけど瀬山さんは?
霊媒一族に生まれ、自由もなく、人生を消費され、好きな女性と引き離されて、霊力だけはあてにされるも扱いはあんなにも酷い。
…………もしもだよ?
瀬山さんと僕が逆だったら?
僕が先に瀬山の家に生まれていたら、僕が瀬山さんの立場になっていた。
そう思うと他人事には思えなくって、酷い事、自分がされたみたいに感じて、辛くて悲しくて悔しくてたまらなかった……んだけど、はぁぁ……それにしたって感情的になりすぎた。
いきなり霊矢を撃つなんて、もう僕、水渦さんに偉そうなコト言えないよ。
『ふふ、ちょっとビックリしましたよ。でもね、あれくらいの気迫がないと勝てない現場もありますから。ただ冷静さだけは失わない事です。自慢じゃないが現場の私はいつだって冷静でした、』
ちょっぴり得意顔の先代。
さすがだ……マジリスペクトっす、と思った僕の横、呆れた顔の瀬山さんがこう言った。
『よく言うよぉ。若い頃の平ちゃん、短気だからすぐに怒って冷静じゃなくなったじゃない。フンガーッって突っ込んでいったクセに』
『だ、だからショウちゃんっ! 私の若い頃の話は内緒でしょー!』
『あっ、そうだった! ご、ごめん、うっかり……』
「え、ちょ、瀬山さん、続き聞きたい。もっとうっかりしちゃってください。
先代の若い頃ってそんなに短気だったの?」
『うん、すごく短気だったよ。さっき平ちゃんが”冷静さを失ったら駄目”って言ったの聞いて笑いそうになったもの』
『いやぁぁぁぁ! やめてぇぇぇぇ! 言わないでぇぇぇ! んもショウちゃん! 黄泉の国に逝ってからすっごくおしゃべりになったよね! 昔はもっと無口だったのに!』
『ふふふ、そうかな。だって黄泉の国はすごく楽しくて、佐知子もそばにいてくれる。幸せだからおしゃべりになったのかも』
幸せだからおしゃべりになった、か。
そっか、そうなんだ。
なんだか僕も幸せだ。
それと佐知子さんって、瀬山さんの奥様かな?
後で聞いてみよっと。
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