第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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なぁんて、男三人キャッキャウフフとしてる中、プリティ&ラブリープリンセスな猫又は、嬉々として霊矢をブロックし続けていた。 そのおかげでゆっくりキャッキャが出来るのだけど、大福マジですごいな。 てかコレ、僕いらなくない? ……と、 そんな和やかムードが途切れたのは、このあとすぐの事だった。 また聞こえたんだ。 低くてしわがれた、あの声が。 ____お前たち、ふざけているのか? 威圧感だ。 口調は落ち着いているのに、強い苛立ちを感じる。 この声……どこから? 瀬山の霊媒師が発したとは考えにくい。 みんな霊矢を撃つのに必死だったし、なにより声が聞こえた途端、ビリビリとした緊張が走った。 揃いも揃って顔を伏せて硬直してる。 ____たかが三尾の猫又に何を手間取っている、      たかが三尾って失礼な、そう思ったのも束の間。 『も、申し訳ございません!』 霊媒師達は急に大声を上げだした。 誰に謝っているんだ……? キョロキョロ辺りを見渡すが、それらしき影はない。 どこかに隠れているのか? 声は……上の方から聞こえる。  ____霊力(ちから)の弱い者はいらない、 ____このまま醜態を晒すなら喰らうだけ、 ____お前たちの代わりなどいくらでもいるのだ、 ____失望させるな、 どういう事だ? えらく態度が大きいな…… 僕が首を傾げる隣。 右側には先代が、鋭い目付きで宙を睨んでいる。 そして反対左側には瀬山さん、俯き気味で微かなため息をついていた。   ____それから……お前、   勝手なままに我らを縛り、 勝手なままに我らを解いた、 しかも……そこの生者に滅させるとまで言うたな、 どこまでも腹立たしい、 昔からそうだ、 そうやって従順な顔をして、 最後は私を裏切るのだ、 そして私を失墜させる、 私はお前が憎い、 お前のせいで私はすべてを失った、 許しまじ……許しまじ…… だが、感謝もしよう、 なんといっても私の依り代(・・・・・)を持って来てくれたのだ、 若き生者の身体を私に差し出さん、 その身体を依り代とすれば、霊力(ちから)のすべてが手に入る、 そう、希少の子の霊力(ちから)がな____ え……? 待って、どういう事? 依り代? 希少の子の霊力(ちから)が手に入る? それって…… 疑問符を飛ばす僕の横、瀬山さんがすっと前に出た。 そして悲しい顔を隠す事なくこう言ったんだ。 『…………相変わらずですね。自分勝手で利己的で。私は岡村さんを依り代に差し出す気はありませんよ。勘違いなさらないでください、……父様』
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