第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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「囲まれちゃいましたね、」 円の中心。 僕と先代と瀬山さん、そして三尾の猫又に退路はない。 囲む男達は口を真一文字に、印を結ぶ者、霊矢を構える者、霊刀を振り上げる者、と、攻撃する気満々だ。 前回、マジョリカさんの現場にいた悪霊達が可愛く思えてくるよ。 だって彼らは丸腰だった、全員、素手で向かってきてたもの。 これは相当気合い入れていかないとマズイな……で、でも大丈夫だろ、だってコッチには伝説の霊媒師と超手練れ霊媒師がいるんだから(大福は危ないからはじっこで待機してね)。 僕の修行ではあるけれど、この状況ならチームワークでいくしかない。 そう思っていたのに、視た目はクール、中身はプリティお爺ちゃんな先代がニコニコ顔で信じられないコトを言ったんだ。 『いやぁ、相変わらず(おさ)の話は長かった。昔もねぇ、会議やらなんやらで延々話してたからねぇ。私なんて途中で飽きてウンザリしてたもの。長くてもオモシロイ話なら良いけど、ちょこちょこ”自分スゴイ”な自慢を取り入れるからツマラナイし。岡村君は初めて聞いたからビックリしたでしょ。やっと終わった! お待たせ! これで修行の続きが出来ますね! というコトで私とショウちゃんは端っこで視てますから、岡村君、まずは一人で頑張ってみて』 ピカーッ!  最高のスマイルで、僕だけでやってみろって言うけど、えぇっ!! 「ちょ! 先代! それ無理! や! だって視てよ! みんな武器持ってる! 生者なら銃刀法で捕まっちゃうくらいハードなの持ってる! 僕、超平和主義だし、あんなのに一斉に来られたら死者になっちゃうよぉ! やだ! ココにいて! 一人にしないで! 僕のスキルは霊体と相互物理干渉よ? そうだ、瀬山師匠ーーーっ! さすがにっ! これは! 一緒に戦ってくれるでしょ? くれるよね? あ、大福は端っこにいていいからね。危ないトコに来なくていいから。バッタでも探しておいで」 あばばばばbと焦りながら右往左往。 先代と瀬山さんを交互に視ながら泣きついたんだ。 だけど昭和コンビ+猫又は容赦がない。 『岡村君、落ち着いて。大丈夫、もっと自信を持ちなさい』 『そう、自信を持って冷静にね。昨日教えた事を覚えてるよね?』 『うなぁ! うなな! うななななななーっ!』 保護者の顔で励ます二人と『一緒にいるにゃっ!』とキレてる猫又。 逆! 逆ですよー! 人は残って猫は待機なんですけどー! そう訴えまくったというのに。
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