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『んもー大丈夫、死にゃあしません。さっき長が言ってたでしょう? ”生者の男は傷付けるな”って。長の命は彼らにとって絶対だ。キミを死なせたり酷いケガはさせないでしょう』
あ……そういえば言ってたな。
『そうだよ、父はね岡村さんの身体を乗っ取る気だからね。ある意味安全が保障されてるようなものだよ』
あ、うん。
瀬山さんのお父さん、僕を乗っ取る気満々だった。
てか怖ぇぇぇぇぇぇ!
『うなぁ、うなななななな。にゃふ』
え、大福がいないと僕は何も出来ない?
ひ、否定しきれない……でもね、物騒なオジサンがいっぱいいるからさ。
僕よりぜんぜん強い子だけど、それでも心配なんだ。
『とにかく、』
クシャッと僕の頭を撫ぜる瀬山さんが言った。
『怖いかもしれないけど、まずは一人でやってみなさい。彼らは岡村さんを死に追いやるまでは出来ない。だが押さえ込み拘束しようとはするはずだ。捕まれば父に乗っ取られる。そうなれば魂は喰われキミという存在はなくなってしまうんだ。そうはなりたくないだろう? だったら戦って滅するしかないよ。私と平ちゃんは一旦引くけど、本当に危ない時は加勢するから安心しなさい。それとね、大ちゃんはキミがダメだと言ってもついてくる、諦めるしかないと思うよ』
ふふ、と困ったように笑う瀬山さんは、虎の子サイズになった猫又もワシワシと撫ぜていた。
そか、うん、そうだよね。
ダメと言っても大福は一緒にいるって言うよね。
だとすれば覚悟を決めて戦うしかない。
大福が手を出さなくても良いくらい気合いを入れて。
で、でもさ、戦う前に……一つだけ引っ掛かる事があるんだ。
「でも、でもさ、あの人達、僕を死なせられないんだよね。なのに僕は滅しにいくって心苦しいというか、ちょっとズルいというか、悪いような気になっちゃう、」
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