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◆
グルリと360度。
手練れの男達に囲まれて、僕と大福に退路はない。
その真ん中で僕は、手練れの中でも一番若そうな男……いや、少年と呼んでもおかしくない子と一対一で、霊力をぶつけ合っていた。
僕を一斉に捕まえに来ると思っていたのに……
だが彼らは『俺にやらせろ』と一番乗りで前に出た少年と僕のタイマンの邪魔をする事はしなかった。
もしかして……瀬山さんと僕の話を聞いたあと、なにか気持ちに変化があったのかもしれない。
本当のところはわからないけど、彼らは今、能面でなく、嘲笑う態度でもなく、ただただ僕と少年を真剣なまなざしで視つめていた。
「そうですか! あなたは殺されてからココに連れてこられたんですね!」
聞きながら、話ながら、僕は利き手の五本の指から真っ赤に光る霊矢を撃った____のだが、なんたって当たらない。
五本の霊矢を余裕でかわす少年が、僕に向かって苦内を投げつつ身の上を語ってくれた。
『そうだ! ウチは母ちゃんと妹と俺の三人家族でさ! 女の細腕で俺を高校まで出してくれたんだ! 当時妹はまだ小学生で金がかかる! だから俺! 高校出て! 地元で有名な”瀬山”に世話になる事にしたんだ! 昔から幽霊視えたし、なんたって給料が良かったからな!』
話してみると言葉は随分と幼かった。
無表情から一変、そこに感情がのるだけで、僕の目にはごくごく普通の若者に視えた。
ビュンッ!
ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!
若いけど腕は一流。
鋭利な苦内を頭を抱えて避けた僕は、懲りずに霊矢を撃ち返しながら話の続きを聞いた。
『修行は厳しかったけど! これで母ちゃんと妹を食わせてやれる! そう思って毎日頑張った! だけど……クソッ! 10年前のある日突然、長が来たんだ! 「おまえは見込みがあるから私に仕えろ」って! それで俺は殺されて無理やり此処にこさせられたんだ!』
春生まれの彼は享年17才だったそうだ。
大事な家族の為、若いながらも一家の大黒柱になる為に、厳しい修行に明け暮れていた矢先、長に殺されさらわれた。
訳がわからなかった。
自分を殺した男は瀬山の長だと名乗るけど、長は生者でもっと若い。
自分の知ってる長とは違う、そう言うと、血相を変えた取り巻きが飛んできて、押さえつけられ手の爪をはがされた。
彼は痛みに絶叫した、……が、それでも、その時はまだ心は折れなかったそうだ。
心が折れたのは、それから少ししてからだった。
いきなり現れた”元瀬山の長”に殺されて、最後に母と妹の顔さえ視る事も許されず、生きていた頃以上に修行を課され、そして生者を襲うように言われ……彼は耳を疑った。
当然首は縦に振らない、至極当然反論した。
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