第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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『そうだ、そのまま希少の子を拘束しろ!! 私の依り代となるのだ、掠り傷一つつける事は許さん!! 反撃されても決して返すな、良いかそこの所を肝に銘じ_______』 止まらない(おさ)の怒声、男達の謎の印、そして僕にしがみ付く少年。 唸る猫又は少年の首に食らいつき僕から引き剥がそうとする、が、そうすればする程、まるで蛇が獲物を締め上げるかのように僕を固く強く締める。 それに気付いた大福が、憎々しい顔で口を放した。 言い知れぬ不安と恐怖に焦る中、グルリの男達が手の動きが止まった。 印を結び終えたんだ……! 心臓が速くなり脂汗が出る、 印は何を発動させる? わからないけど僕を縛る何かであるのは間違いない、 男達の両手が光り出した、 マズイ……マズイぞ! 心臓が踊り狂う、 逃げなきゃ、なんとかして逃げるんだ、 だが動けない、 少年の腕が、足が、僕に絡んで締め上げる、 大福は再び少年の首に牙を食い込ませた、 後ろから首を噛み、引き剥がそうとするが____ 『絶対に離さない、』 少年は食い込む牙に呻くものの、頑として僕を離そうとはしなかった。 クソッ! なんでわかってくれない! これが最後なんだ! 最後まで(おさ)の駒でいるつもりなのか! あんなヤツ、あなた達を使い捨てとしか思っていない! そんな奴の命令をまだ聞くのか! 駒じゃなく、人として最期を迎えたくないのか! 男達の手が光を増した。 向かい合わせた内側に、(のこぎり)の刃のような稲妻が絶えず走る。 合わせた両手を広げると、広げた分だけ稲妻もデカくなり、時折、電気が爆発するみたいな音がした。 固いアスファルトの上に分厚い陶器を思いっ切り叩きつけたような。 そんな音が耳からはもちろん、目から、口から、皮膚から、毛穴から、身体の部位を選ばず入り込む。 途切れない耳鳴り、ビリつく振動、眩しすぎる視界。 遠くから(おさ)の怒声が聞こえてくるも、いろんな音がうるさくて、何を言っているのが聞き取れない。 だがこれはいい、どうせ勝手な事しか言わないのだ。 くだらない戯言なんて聞きたくもない。
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