第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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霊力(ちから)の発動はこれだけに留まらなかった。 男達の頭の上では、巨大な稲妻が唸りを上げている。 天にかざした手のひらは、光に溶けて視る事は叶わず、更に言えばそれぞれの持つ稲妻は、隣同士互いに引き合い融合し、やがて巨大な輪になった。 今の男達は、火花散る茨の王冠を下から持ち支えているように視える。 これで僕を縛るつもりなんだ……! なんだよ……これ……これが”瀬山の霊媒師”なのか……? これが瀬山のレベルなのか……? 少年はますます力を強くする、僕を動かさまいと絡みつく。 茨の冠は男達の霊力(ちから)を吸い上げ続け、目も眩む光を発していた。 支えるのが難しくなったのか、上げた両腕が震え始めた。 いつ爆発してもおかしくない、そう思えるほど霊力(ちから)を蓄え、やがて男の一人が呟いた。 『天に昇りし我らが霊力(ちから)、槍の豪雨とならんことを、』 言霊……か? 薄い疑問が頭をもたげた瞬間。 茨の冠から幾筋もの強い光が天に向かって発射された。 空を流れる星よりも速く、速度を持って何千何万の光が打ち上げられる。 僕に縋る少年はギュゥッとしたまま離さない。 それでもなんとか腕を伸ばし、猫又の毛皮を鷲掴むとグィとこちらに引き寄せた。 何が起きているのかわからないけど、大福を守りたい、とにかく近くに来てほしかった。 数多の光の帯が天に昇りきった半瞬後。 ザンッ!! 鈍い音がした。 視れば地面に槍が刺さっている。 「……なにこれ」 訳が分からず独り言ちた僕は、それ以上声を出す事が出来なかった。 だってそれどころじゃない。 ザンッ!! ザンッザンッザンッ!! ザァァァァァァァァァァァァ!! 大粒の雨が二三(にさん)落ちてからの本降り。 そんな流れに酷似していた。 ただ違うのは落ちてきたのは雨じゃない、数えきれない槍なのだ。 ……あ、 ____天に昇りし我らが霊力(ちから)、槍の豪雨とならんことを、 さっきの言霊通りだ……男達の霊力(ちから)が天に昇り、槍となって降ってきた。 豪雨となった槍は、グルリ円陣の外側だけに、男達の背中を掠め降り続け、積り積もって天高く壁となる。 それを槍の降らない円の内側から、僕は呆然と眺めていた。 しばらくし、槍の降る音がやんだ。 落ちた槍は数える気にもならない。 そのくらい沢山の槍が降り積もり、隙間なく地面を埋めて土台となって、更にその上に槍が降る……延々の繰り返しは槍でもって壁が出来、その壁は円錐の空間を作り上げた。 槍の壁の内と外。 僕と大福と男達、そして先代と瀬山さんと(おさ)。 僕達は壁によって切り離されたのだ。
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