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霊力の発動はこれだけに留まらなかった。
男達の頭の上では、巨大な稲妻が唸りを上げている。
天にかざした手のひらは、光に溶けて視る事は叶わず、更に言えばそれぞれの持つ稲妻は、隣同士互いに引き合い融合し、やがて巨大な輪になった。
今の男達は、火花散る茨の王冠を下から持ち支えているように視える。
これで僕を縛るつもりなんだ……!
なんだよ……これ……これが”瀬山の霊媒師”なのか……?
これが瀬山のレベルなのか……?
少年はますます力を強くする、僕を動かさまいと絡みつく。
茨の冠は男達の霊力を吸い上げ続け、目も眩む光を発していた。
支えるのが難しくなったのか、上げた両腕が震え始めた。
いつ爆発してもおかしくない、そう思えるほど霊力を蓄え、やがて男の一人が呟いた。
『天に昇りし我らが霊力、槍の豪雨とならんことを、』
言霊……か?
薄い疑問が頭をもたげた瞬間。
茨の冠から幾筋もの強い光が天に向かって発射された。
空を流れる星よりも速く、速度を持って何千何万の光が打ち上げられる。
僕に縋る少年はギュゥッとしたまま離さない。
それでもなんとか腕を伸ばし、猫又の毛皮を鷲掴むとグィとこちらに引き寄せた。
何が起きているのかわからないけど、大福を守りたい、とにかく近くに来てほしかった。
数多の光の帯が天に昇りきった半瞬後。
ザンッ!!
鈍い音がした。
視れば地面に槍が刺さっている。
「……なにこれ」
訳が分からず独り言ちた僕は、それ以上声を出す事が出来なかった。
だってそれどころじゃない。
ザンッ!!
ザンッザンッザンッ!!
ザァァァァァァァァァァァァ!!
大粒の雨が二三落ちてからの本降り。
そんな流れに酷似していた。
ただ違うのは落ちてきたのは雨じゃない、数えきれない槍なのだ。
……あ、
____天に昇りし我らが霊力、槍の豪雨とならんことを、
さっきの言霊通りだ……男達の霊力が天に昇り、槍となって降ってきた。
豪雨となった槍は、グルリ円陣の外側だけに、男達の背中を掠め降り続け、積り積もって天高く壁となる。
それを槍の降らない円の内側から、僕は呆然と眺めていた。
しばらくし、槍の降る音がやんだ。
落ちた槍は数える気にもならない。
そのくらい沢山の槍が降り積もり、隙間なく地面を埋めて土台となって、更にその上に槍が降る……延々の繰り返しは槍でもって壁が出来、その壁は円錐の空間を作り上げた。
槍の壁の内と外。
僕と大福と男達、そして先代と瀬山さんと長。
僕達は壁によって切り離されたのだ。
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