第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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男達はひとしきり不平不満を漏らし、深いため息をつくと黙り込んだ。 (おさ)なんか放っておけと言いつつも、どうも気になっている様子だ。 この人達がどのくらいの年月仕えてるのかは知らないけど、あのブラック上司にとことん恐怖心を植え付けられてるんだろうな。 部外者である僕は……わかったような事を言うのもなんだしと一緒になって黙っていた……のだが、こう暗くちゃ身動きがとれないし、なにかと不安だ。 放電して明かりの代わりにしたいなぁと、でもその前に一言声を掛けてからにしようと思ったんだ。 「あの……すいません。この中暗くて不便なので、放電して明るくしてもいいですか?」 暗闇でワタワタな僕と違って猫は暗くても大丈夫。 闇をものともしない猫又は、隣でピッタリとくっついている。 フワフワな毛皮を手探りでナデつつ返事を待っていると…… 『……希少の子か。明るくするのは構わないが、視覚は霊視で確保すればいいだろうに、』 暗がりの中、男の一人がこう言った。 え? 霊視で視界を確保……って? そんなコト出来るの? 「あの……不勉強ですみません。霊視すると暗くても視えるんですか?」 僕としては大真面目な質問だった。 だが男達はザワついた。 『……? 何を言っている、常識だろ。霊視はなにも過去や遠く離れた場所を視るだけじゃない、暗闇や、もしくは目隠しされた時、肉眼で見えなくとも、霊力(ちから)を使って目の前を(・・・・)霊視すれば、いくらでも視えると思うのだが……まさか……知らないのか?』 ”冗談だろう?”と言いたげな空気にカッと顔が熱くなる、や……すみません、そのまさかです。 「……お恥ずかしい話、僕はまだ霊視が出来ません。出来ないばかりか、そういう霊力(ちから)の使い方がある事も知りませんでした。べ、勉強になります」 最後の方は声が小さくなってしまった。 瀬山の霊媒師からしたら、そんな事も知らないのってなるのか……き、厳しいな。 僕が呑気なのだろうか? そんなふうに考えた事がないよ。 だってさ、ウチの会社は揃いも揃って優しくて、僕が霊矢を撃っただけでベタ褒めだ。 霊視が出来ないからって呆れられたり怒られたりもしないもの。 『こんなものは基本だと思うのだが……岡村……と言ったな。お前は希少の子なのだろう? 本当に霊視が出来ないのか? ……どうも調子が狂う」
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