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バチ……バチバチ……
とりあえず。
放電のお許しが出たので、控えめに放ってみた。
リンゴ大の赤い珠を(電気を丸めて丸くした)テキトウな間隔で地面に置いたのだが……なんだこれ。
淡い光が点々と揺らめいて、怪しい儀式でも始まるのかって雰囲気だ。
でもまぁいいや、これで暗闇から解放されると顔を上げれば、瀬山の手練れ達の全員が僕に注目してるじゃない。
ちょ、ちょっとびっくりした。
これ僕だから良かったけど、嵐さんなら確実に気絶するからね。
『お前……岡村は霊視が出来ないと言ったが、希少の子で霊視が出来ないなどあり得ない。我々をからかってるつもりか?』
赤い光が下から当たり、より悪霊っぽく視える男が言った。
「あり得ない……ですか。や、あのですね、からかうとか、そんなんじゃないです。霊視が出来ないのは本当です、」
はぁ……何度も言わせないでほしい。
言ってて情けなくなるよ(手練れの前じゃ特にね)。
『それでよく霊媒師が務まるな……だが希少の子の霊力は計り知れないと言う。霊視など初歩的な術は、もはや必要無いという事か、』
いえ必要です。
必要に決まってます。
霊視スキルがないがゆえ、山まで来るのにどんだけ苦労したか……
『沈黙は肯定、か。……ならば問おう。岡村がヒトやモノを探す時、霊視を使わず代わりに何を使うのだ』
眉間にシワを寄せる男の顔は期待に満ちている、これきっと、僕がスゴイ技を持ってると誤解してる。
うわぁ……答えにくーい。
「何って……えっと……電柱?」
『電柱……?』
「電柱」
僕の答えにクルリと後ろを向いた男は、仲間達とヒソヒソやりだした。
小声のせいで全部は聞こえないけど『本当の事を答える気がないんだ』とか『ごまかし方が下手だ』とか『電柱はないわ』とか部分的に耳に入る。
や、だから本当に出来ないし、むしろ出来る事の方が少ないし……ああもう!
「あの! 僕が希少の子だからってハイスキルと思わないでくださいッ! 今の僕が出来るのは霊矢を撃つ事と癒しの言霊、だけです! なんかすいません!」
これだけ言えば、わかってくれるか。
彼らにとって ”希少の子=瀬山さん” こんなイメージだろうから、同じ希少の子ならスーパーハイスキルくらいに思うのかもしれない。
無理もないけど、僕の出来なさっぷりを見くびらないでほしい。
前職は通信会社のサラリーマンだ、霊媒師のレの字もないまま30年生きてきた。
急に目覚める(霊力に)訳がない。
今は日々勉強の毎日で、今日だって修行の為に山まで来たんだから。
僕のヘタレ発言で空気はグダグダ。
少年の辛い過去に、一緒になって泣いていたのがウソのよう。
男達はザワザワしながら何か話していたんだけど、ふと止まり、そして僕にこう言ったんだ。
『言いにくい事を言わせてしまって悪かった。だが、希少の子なのに何も出来ないんだな。……大丈夫か? それで本当に俺達を解放出来るのか……?』
意外だった、この人達……解放を望んでいるのか。
怖くないのかな、いやじゃないのかな。
それぞれ思う所があるのだろうけど。
その結果、解放が彼らの望みだとしたら。
解放……そうだ。
僕はこの人達を、長から、現世から、解放すると言ったんだ。
解放と言えば言葉は綺麗だが、それをするには滅さなくてはならない。
……
…………
………………
今となって、僕にそれが出来るのだろうか……?
話してみれば人間臭くて、ブラック上司に耐えてきたこの幽霊達を。
上司がいなけりゃ思いっ切り愚痴を言う、サラリーマン時代の僕とよく似ているこの人達を。
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