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そうか……今日のさっき、いきなり思った訳でなかったんだな。
昨日の先代と瀬山さん、二人が少年の話を聞き、それを聞いていたみんなも気持ちが動いたんだ。
『我々には時間がない、もしも解放されずにこのままでいたら、心は完全に蝕まれてしまう。そうなれば誰に何を言われても響かなくなる。さっき……結界が解かれる前、持丸に強く敵対心を持つ者がいただろう? それと岡村が霊矢で肩を打ち抜いた者。あの二人はもう手遅れだった。長きにわたり毒されすぎた。結果、己の事しか考えず、生者と死者を喜びを持って襲うようになった。己の為なら仲間も襲い、彰司さんと持丸を心底憎み、長にへつらい頭を垂れる……ああなったらもう、……ああ……だが……だがな、あんな奴らでも昔……生きてた頃は違ったんだ、お人好しで……良く笑い……仲間思いの心の優しい奴らだった……嘘じゃない、……本当に……本当に良い奴らだったんだよ、』
嗚咽を堪え、何度も”本当なんだ”と繰り返す老年に同情せざるを得なかった。
だって辛いよ……もしも僕がこの霊の立場だったら。
明るくて優しい”おくりび”の人達が、万が一変わってしまったら。
辛い気持ちは容易に想像出来る。
この霊達は悪霊で、この霊達は霊媒師で、この霊達は加害者で、この霊達は被害者でもある。
凶悪で、手練れで、人を襲い、不本意に長の駒にされた。
そして今、後悔と罪悪の深い海で溺れている。
助けて、解放してと、彼らは僕に手を伸ばしているんだ。
この機会を逃したら彼らは救われない。
……
…………
………………
「みなさんの気持ちはよくわかりました。本気で解放を望まれているんですね……、では今度は僕の番です。さっきの質問の答えなのですが、」
____大丈夫か?
____それで本当に俺達を解放出来るのか……?
「あなた方全員、岡村英海が解放させていただきます。
心を込めて滅しますので、どうぞよろしくお願いします」
男達の一人一人の顔を視て、
背筋を伸ばし腰を折り、
深く頭を下げた。
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