第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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イチニイサンシイ……改めて数えてみると、男達は全部で27人いた。 最初に視た時、30人くらいかなと思っていたけど大体合っていた。 「一度に撃てる霊矢の数は10本です。霊矢は溜めた霊力(ちから)を指先から発します。指によって威力が変わるという事はありません。撃つ本数に制限もないので一定の威力のまま延々撃てます」 唯一使える霊力(ちから)、霊矢ついて説明すると、男達は『おぉ……!』と感心したような声を上げた(ちょっと照れちゃう)。 興奮気味の少年が、ハイハイハイ! と手をあげながら僕に言う。 『あんたスゴイな! さっき一本だけ撃ったのを視たけど、アレと同じのを10本同時に撃てるのか? 大したもんだよ。岡村の霊矢なら苦しまずにすみそうだ。頼りにしてるぞ!』 「う、うん、頑張る」 複雑な心境だ。 明るく笑って”頼りにしてる”というこの子は、17才のまま時を止めている。 こんなに若い子まで滅さなくちゃいけないなんてな。 でも、躊躇したら駄目なんだ。 それをすればこの子が苦しむ事になる。 鼻の奥がツンと痛んだ。 涙がこみ上げるのを猫又を撫ぜながらグッと我慢していると、老年が口を開いた。 『そうだ、我々に少しでも同情するなら躊躇するな。……それからな、岡村に言っておきたい事がある、』 「は、はい! なんでしょう!」 僕は内心何を言われるのかドキドキだった。 本当は瀬山さんが良かったとか、何か頼みがあるとか、そういった事かなと思っていたのに…… 『いいか、よく聞け。岡村はこれからも霊媒師を続けるのだろう? だったら。さっきみたいな事は言うな。敵に囲まれ逃げ場もなのに「霊矢と癒しの言霊しか使えません!」などと自分の弱みを敵に晒してどうする。今回囲んでいたのが我々だから良かったのだ。そうでなかったら危なかった』 老年はそれを皮切りに、霊媒師とはなんたるか、敵地でどう動くべきなのか、これを『悪霊の私が言うのもなんだが』を枕言葉に、そりゃあもうたっぷりと教えてくださったのだ。 『____で、あるからして、もっと危機感を持たねばならん。つまらない油断で怪我をしたり命を落としては嫌だろう? だから早く霊視を覚え、その他の術も身に付け、あとは武術、交渉術、それから____』 は、はい!  すみません!  勉強になります! 僕は延々これを繰り返す。 長いけど、けっこう重複してるけど、だけどやっぱりありがたかった。 この人は瀬山の霊媒師なのだ。 言ってる事はもっともで学ぶ事しかない。 確かにな、敵に囲まれた状況で、自分のスキルを喋っちゃってどうすんだって話だよ。 今度からは気を付けようっと。 そして老年の話に終わりが見えない。 それでも此処にノートがあれば良かったと思いつつ、真剣に聞いていると、別の男が呆れたように言ったんだ。
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