第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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『本当に……これだから新人は……これだから希少の子は……岡村はこれからも霊媒師を続けるのだろう? だったら、もっと割り切るんだ。こういう事はきっとこれからもある』 困ったように泣き笑う中村さんは、こんな時でも教官時代が抜けないようで、僕に割り切るように言った。 それを聞いていた野崎さんも遠藤さんも森木さんも…… 『そうだ、霊に対して同情するなとは言わない。だが、それはそれだ。同情し、躊躇して、感情に引っ張られれば悪霊に付け込まれる。しおらしかったのが手のひらを返し、やはり滅されてなるものかと反撃してくるかもしれない。そうなれば岡村に危険が及ぶ。そしてもし単独ではなくツーマンセル、スリーマンセルだった場合、その甘さが仲間を危険にさらす』 はい、 そうですよね、 ありがとうございます、 気を付けます、 頑張ります、 僕は何度も繰り返す。 言われた事を胸に刻む。 滅されるこの(ひと)達の最期の言葉だ。 滅する立場の僕に、会ったばかりの僕に、大事な事を教えてくれる。 これが本来の、瀬山の霊媒師なのだな。 心が静まる、少しずつ落ち着きを取り戻す。 みんなと自分自身の為に、心を込めて解放しようと改めて覚悟が決まったその時だった。 眉間に深いシワを寄せる(かける)君が、燃えるような目で僕を視たんだ。 …………どうしたんだろう? (かける)君は、まわりのみんなを押しのけるように前に出た。 そして、 『俺……やっぱり滅されたくない』 拳を握りしめ、伏せた顔から上目遣いにそう言ったんだ。
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