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……うぅ……う……
どうやら僕は……気を失っていたみたいだ。
頭が重い……頬にあたる地面の感触。
薄く開けた目の先には、僕が丸めた電気が弱々しく光っている。
それすらも眩しく感じ、目を細めるが……意識は徐々に戻りつつあった。
痛む身体をなんとか起こすも、回る眩暈と胃が捻じれるような空腹感に襲われる。
まわりには誰もいなくて、静まり返った空間は僕の呻き声だけが響いていた。
ああ……これ、霊力を使いすぎたんだ。
それでも、質より量の僕だから、霊力の枯渇は感じない。
ただかなり消耗したらしく、胃が、身体が、エネルギーを強く欲しているのがわかる。
困ったな……食料が入ってるリュックは槍の空間の外だ。
本当は何か口にした方がいいんだけど、取りにいけば長がいる。
こんだけ弱った状態で、奴の前に出るのは危険だし……なんてウダウダしていると……
薄明りに照らされた大福が、僕のリュックを口に咥えてやってきた。
「持ってきてくれたの……?」
目の前まで来た猫又は、大きなお口をクワッと開けてリュックを地面に落とした。
そして一言『うな』と鳴いて、僕の顔をジッと視る。
「僕がほしいモノ、よくわかったね……ありがと……ありがとね……!」
僕は言いながらちぎるようにリュックを開けた。
取り出すのももどかしく、ひっくり返して食料をぶちまけた。
奥さんが持たせてくれたパンとか飲み物、節約すれば4日は持つと踏んでいたのに。
僕はそれを片っ端から開けて食らいついたんだ。
バクバクバクバク!
頭の中では行儀が悪いな、後の事を考えれば全部食べたら駄目だと思うのに、口に広がるパンの甘味がとてつもなくおいしくて、制御が効かず狂ったように咀嚼した。
ひとつ、またひとつとパンの袋を開けていく……が、とうとうパンがなくなった。
「全部……食べちゃった……ゴッ……ゴホッゴホッ……!」
慌てて食べたせいだろう。
パンがつかえて喉が苦しい。
僕は目についたペットボトルを一気に飲んだ。
途中、お茶が気管に入って咳き込んで、涙と鼻水でグチャグチャになる。
痛くて辛くて気持ち悪くて、だけどおかげで空腹感はなくなった。
同時、眩暈も止まる。
高カロリーな食べ物が身体に入り、一気に元気が湧いてきた。
身体が熱くなってくる、食事の後は体温があがる。
____あったかいなぁ……生者の体温だ、
……
…………僕に触れた翔君が言ってたな。
そうだ、僕は生者で命がある。
翔君も中村さんも他のみんなも、かつては持っていた命だ。
失えば戻らない、大事な命。
長はそれを軽く見る。
他人の命も魂も、まるで自分の為の消耗品のように扱うんだ。
アイツのせいでたくさんの生者も死者も地獄を見た。
腹の底から激しい怒りが込み上げてくる。
「絶対に許しちゃいけない……僕の身体は渡さないし、今日で長を滅するんだ。____僕は、」
跳ねるように立ち上がり、両手のひらに溜めた霊力を、槍の壁にぶっ放す。
バラバラと崩れた壁の先には、先代と瀬山さん、そして長の姿があった。
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