第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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『岡村君!』 『岡村さん!』 現れた僕を視て、手練れ二人が駆けてくる。 心配した顔をして、近くに来て目が合うと安堵の息を吐いたんだ。 ああもう……揃ってそんな表情(かお)をしないでください。 せっかくのイケメンが台無しだ。 「ご心配をおかけしました。僕は大丈夫ですよ」 頭を下げつつそう言うと、 『怪我は……なさそうだね。良かった、大丈夫だとは思ってたけど……それでもね、岡村さんが(槍の)中に消えてから心配だったんだ』 瀬山さんは言いながら目を細めた。 ただでさえ白い肌は心なしか青みが増してる。 隣に立つ先代も、黒い眉をハの字にさせてこう言った。 『本当に無事で良かったです……とても心配でした。何かあったらすぐに行こうと、中を視ようとしたのに結界に弾かれてしまったんだもの。情報を得られないのは何よりも不安になる。中の様子を私とショウちゃんに視せたくなかったのか……それとも(おさ)に視せられなかったのか。だけど中には大福ちゃんがいる、だから暫く様子を見る事にしたんです』 霊視防止の結界を張っていたのか……そんなん一言も言ってなかったのに。 何も言わずにそつなく防御。 こういう事に気が回るのは、長老の中村さんに違いない。 さすがだなぁ……ま、あの中での僕らの会話、(おさ)が聞いたら秒でガチギレするだろし、ナイス判断。 だけどその分、先代達に心配かけちゃった。 二人ともごめんなさい。 『とにかく、岡村君が無事で良かった。大福ちゃんもありがとうねぇ。さすがは三尾の猫又だ。大福ちゃんにもボーナスをださないといけないね。 ところで……岡村君。此処に彼らの姿が視えないようだが、解放してあげられたのかい?』 先代が僕に問う。 瀬山さんも気になるようで、一緒になって僕の答えを待っていた。 「はい……彼らは、」 ____ドクンッ……! 不意に心臓が鳴った。 大きく一度、その後は強く早く、ドクドクと鳴りやまない。 同時、背中に突き刺すような視線を感じた。 ____ドクンッ……ドクンッ……! 全身が粟立つように立った鳥肌。 僕はゆっくりと振り返る……と、そこには邪悪に笑う(おさ)がいた。 ____ドクンッ……ドクンッ……ドクッドクッドクッ 心臓の音が大きくなっていき、耳の中は心音でいっぱいだ。 先代が何かを言っている、 瀬山さんも何かを言っている、 (おさ)も。 ____ドクッドクッドクッドクッドクッドクッ、 踊り狂う心臓。 (おさ)の口元は ”喰わせろ” と形を造る。 先代と瀬山さんが僕の前に出る、僕を守ろうとする。 ありがたいな、いつだって二人は僕の味方だ。 だけど____ 僕は二人を手で制した。
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