第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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制された手練れ達は怪訝な顔で、だが僕の前から頑なにどこうとしない。 「二人はここで視ててください。大丈夫、心配しないで。だって僕の修行でしょう? 僕が行かなきゃココまで来た意味がないもん」 えへへと笑ってみた。 少しでも安心させたかったんだ。 だけどこの笑顔がかえって不安にさせたみたいで…… 『こんな時にふざけないで! 岡村君、ヤケになってるの? だからって(アレ)はダメだよ、危険すぎる。元々ね、(おさ)は修行メニューに入ってないの。手下だけ相手にさせるつもりだったんだ。キミこそ視てなさい! ここは私とショウちゃんで行くから!』 す、すごい剣幕。 いつもほんわか優しいのに、こんな先代レアすぎる。 瀬山さんもおんなじで、『自分の霊力(ちから)を過信するなっ! 黙って此処で待っていろっ!』とまぁ、またもや師匠モードでキャラ変だ。 二人とも、僕を大事に想ってくれるんだ。 ありがたいな、嬉しいな、でもね。 「先代、ヤケになってるんじゃありません。大丈夫、冷静です。瀬山さん、僕はまだまだ未熟だけどあなたと同じ希少の子だ。希少の子は霊力(ちから)の使い方が違う、昨日そう教えてくれたじゃない。僕、少しだけわかったんだ。だから大丈夫」 信じて、ダイジョブ、行かせてください。 それと瀬山さんにはもう一つ、言いたい事があるんだ。 「あのね、瀬山さん。(おさ)がゴッツイ悪霊で、僕一人じゃ頼りないのはわかってる。でもね、あんな人でも(おさ)は瀬山さんのお父さん。直接瀬山さんが手を下せば、後々辛い気持ちになると思うんだ。僕、それがやなの。せっかく今は幸せなのに……どうしてもやなんだよ。だから僕が行きたいんだ」 瀬山さんは一瞬言葉を詰まらせるも、目に力を込めて横に大きく首を振る。 『岡村さん……気持ちは嬉しいよ。でもね、これは私と父の問題だ。父を滅したあとの私の事は考えなくていい。 それより父を甘く見たらいけないよ。あの(ひと)は人の心が無くなってしまった。キミの身体を乗っ取るつもりで、その為に、生きたまま魂を喰らうつもりなんだ。 それこそ微塵の躊躇もなくね。さっきも言っただろう? 魂を喰われれば、キミという自我も存在もなくなってしまう。無になってしまうんだ。私こそいやだよ。岡村さんはもう、私にとって大事な子なんだ。ねぇ、お願い、此処で待ってて。キミ一人で行かせる訳にはいかないよ、』
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