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まるで蛇の捕食の場面だ。
耳まで裂けた大きな口は、翔君を頭から呑み込んで、ズルリと吸い込み、最後、僅かに覗く足先が、今この瞬間長の中に消えた。
目の前の惨劇に心臓が痛みを持って早くなる。
だが同時、僕は数を数え始めた、声には出さず頭の中で、今すぐ翔君を助けたいのを我慢して。
『忌々しい小僧が……なにが私を滅するだ……! そんな事が出来るはずがないだろう。自惚れて、霊力を過信し粋がってたとて、私に喰われるだけなのだ。少し考え身の程を知っていれば、まだこの世にいられたものを……まぁ、いい。愚か者でも喰えば私の霊力になる、』
7,8,9,10,11、____
頭の中でカウントを取る。
僕の後ろじゃ味方の”瀬山”が喰われた事で、先代達が叫びながら駆け出した。
急ぎそれを止める為、虎の子大の猫又をチラリと視ると『うな』と一声鳴いた後、二人の行く手を阻みに行った。
20、21,22,23、24、____
数えるのは五十までだが……もどかしいよ、まだ後半分残ってる、
これ本当に最後まで数えなきゃダメか? ……って、ううん、わかってる、ダメなんだ。
けどさ、わかってても心配だ。
中村さん、大丈夫なんだよね? 信じていいんだよね?
『何故だ……あやつらは私の忠実な駒だった……私を恐れ恐怖し、どんな命にも従ってきた。だのに、この変わりようはなんだ、私を“長”とも呼ばず、大口を叩きおった……何が起きた、彰司と持丸が来たからか……? それとも……希少の子が何か吹き込んだのか……?』
31、32、33、34、35、____
独り言ちていた長が疑心の目をこちらに向けた。
僕との距離、目測2メートル。
近くもないが遠くもない……が、頼む、それ以上は離れないでくれ。
『岡村がそそのかし謀反を起こさせたのだな……あやつらは駒の中でも選りすぐりの手練れ達だ。喰らわず生かしておいたというのに、それをお前が使い物にならなくしたのだ……! 何故だ……何故、彰司といい岡村といい、希少の子は私の邪魔ばかりするのだ……!』
長の恨み節を聞きながら、僕は下げた両手のひらを向かい合わせた。
表情は消し去って気付かれないよう霊力を溜める。
『だが……構わん。岡村の身体と希少の霊力はすぐに私の物になるのだ。あやつらが何人いた所で岡村一人の価値にもならん。駒はまた集めればいい。今はまず、謀反を起こした残りの全て、喰らい私の霊力にしよう。苦内の小僧を喰らったようにな』
まったく……長の話は本当に長いな。
でもいいよ、そのまま一人で話してて、カウントはあと少しで50に届く。
「………………ジュウサン、ヨンジュウヨン、……」
『……? 何を呟いている、』
「……45、46、47、48、49______」
訝し気な長、両手のひらに溜まる霊力、焦る気持ちにプレッシャー、どうか上手くいきますように、
「____50、」
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