第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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よしっ! 数え切った、長かった! ここからは時間勝負だ、 (かける)君、2分待ってて、 必ずキミを助けるからね! 「大福! 僕を守って!」 呼ぶや否や。 飛び来た猫又は巨大化し、唸りを上げて牙を剥くと、(おさ)に激しく威嚇した。 いつもありがと、助けてくれてありがと、心強くて泣けてくる。 時間を稼いで、そのまま1分僕を隠して。 急がないと。 焦る気持ちを無理矢理抑え、下げてた両手を目の高さに引き上げた。 さっきから、こっそり溜めてた僕の霊力(ちから)は今回小さなビー玉大だ。 だけど濃厚、中身は詰まりに詰まってる。 息を吸い、火花を散らすビー玉に更に霊力(ちから)を流し込んだ。 途端赤黒かった塊は、色が薄まり朱に変わり、ぶわんと一気にデカくなる。 あとはこれを、いつもの鎖に、構築するんだ、向かい合わせた、両手両五指、左右から、近付けて、接触させて、電気と電気を、ぶつけ合って、ショートさせれば…………っ! バチバチィィィッッ!! 手の中の塊は、新たに加えた強い霊力(ちから)に反応すると、形状変化を成功させた。 が、いつもの鎖と少し違う、色は朱色で赤じゃない。 無数の鎖は出現しない、此処にあるのは一本だけ。 あえてこうした、 分散させない、 霊力(ちから)の全てはこの一本が独占する、 強靭でしなやかで、 同じ霊力(ちから)を有するモノを探知する、 どこまでも追いかける、 どこにいたって(・・・・・・・)つかまえる、 この鎖を、前方約2メートルに____ぶん投げるっ!! 「行けーーーーーーーーっ!!!」 僕の絶叫に守護猫又が横に退いた。 その先に現れた、(おさ)に向かって朱色の鎖は速度を持って宙を行く。 瞬き三つの時間を経て、鎖の先は今まさに(おさ)の眉間に届く所で____ 息を呑む、どうか上手くいってくれ。 これは中村さんと(かける)君の二人の案だ。 聞いた時、僕には出来ない、スキルが足らない、そう思った。 だけど、その案を今まさに実行中な訳で。 汗が落ちる。 お願いだから、上手くいって。 (かける)君を返してくれ。
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