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俄然、士気が上がった男達の顔つきが変わった。
中村さんを中心に作戦会議が開かれる。
『まず注意してもらいたいのは、我々の魂を決して長に渡してはならないという事だ。誰かが喰われれば、その分長が霊力をつける。そうなれば残って戦う者達の負担が上がる』
生前の教官よろしく、中村さんは背筋を伸ばし、キビキビとした口調が頼もしい。
今話しているのは一番大事で、一番の心配事だ。
長に喰われない為の策を出さない事には、一矢報いるのは不可能になる。
しかし……その喰らうってのがよくわからないんだよなぁ。
喰らって取り込むって言うけど混ざったりしないの?
混ざると危険じゃないの?
ちょっと聞いてみるか。
「はい! 中村さんに質問です! あの……不勉強ですみません。霊が他の霊の魂を喰らう、これがよくわからない。ウチの会社に、あ、その人は生者なんですけどね、死者の魂を身体の中に取り込んでる人がいるんです。必要な時に取り出して自分の霊力として使う……なんだけど、その人言ってました。”自分の魂と死者の魂が混ざらないように注意してる”って。混ざればどちらの人格も魂も破壊されてしまうんだって。長は混ざったりしないの?」
これは社長の事だ。
あの人の中には凶悪な殺人犯3人の魂が入っている。
自分の魂をパーテーションで区切り混ざらないようにしながら保存して、必要な時に薄切りにして取り出してソウルアーマーにしてるんだ。
『岡村の会社に取り込みが出来る者がいるのか。生者なのに大したものだ。これは霊同士でも難しい。岡村の言う通り、取り込めば魂は混ざってしまう、……長が、どうして魂を取り込んでも無事で、しかも自身の霊力に出来るのか。それは取り込んだ魂が長の魂と混ざる前に、霊力でもって先に破壊しているからなんだ』
「破壊……?」
『そうだ。そもそも魂は霊力の集合体だ。その集合体に人格や記憶といった情報が膨大に書き込まれている。異なる魂が接触し混ざり合うと、互いに有する情報も混ざってしまう。すると魂は己が何者かが解らなくなるんだ。解らなけれは解ろうと情報を欲し、互いの情報を奪い合う。奪い合い更に混ざればますます解らなくなる。愛した者を忘れてしまい、代わり、知らない誰かの言葉が溢れ出す。そうやって最終的に……己を完全に見失った時、魂は破壊されるんだ』
「………………怖いですね、」
『ああ、怖いよ。普通は出来ない。長は喰らった魂を……いや、魂が有する情報を破壊するんだ。そうすれば混ざる事はない。情報を消された魂はただの霊力となる。そう、長が自由に使える霊力になるんだ』
そうか……同じ魂を取り込むにも社長のやり方とは違うんだな。
というかこのやり方……昨日の瀬山さんのに似てないか?
2人で修行をしてた時、あの人は僕の構築した鎖を乗っ取った。
____ご、ごめんね、せっかく岡村さんが構築した鎖なのに、
____だけどそうだよ、乗っ取ったんだ、
____キミの鎖に私の霊力を入れ、内側から破壊したの、
____そしてそれを取り込み、
____最終的には私の意のままに操れるようにした、
こういう所……親子だな。
鎖と魂の違いはあれど、似た方法で乗っ取りを成功させるんだ。
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