第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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俄然、士気が上がった男達の顔つきが変わった。 中村さんを中心に作戦会議が開かれる。 『まず注意してもらいたいのは、我々の魂を決して(おさ)に渡してはならないという事だ。誰かが喰われれば、その分(おさ)霊力(ちから)をつける。そうなれば残って戦う者達の負担が上がる』 生前の教官よろしく、中村さんは背筋を伸ばし、キビキビとした口調が頼もしい。 今話しているのは一番大事で、一番の心配事だ。 (おさ)に喰われない為の策を出さない事には、一矢報いるのは不可能になる。 しかし……その喰らうってのがよくわからないんだよなぁ。 喰らって取り込むって言うけど混ざったりしないの? 混ざると危険じゃないの? ちょっと聞いてみるか。 「はい! 中村さんに質問です! あの……不勉強ですみません。霊が他の霊の魂を喰らう、これがよくわからない。ウチの会社に、あ、その人は生者なんですけどね、死者の魂を身体の中に取り込んでる人がいるんです。必要な時に取り出して自分の霊力(ちから)として使う……なんだけど、その人言ってました。”自分の魂と死者の魂が混ざらないように注意してる”って。混ざればどちらの人格も魂も破壊されてしまうんだって。(おさ)は混ざったりしないの?」 これは社長の事だ。 あの人の中には凶悪な殺人犯3人の魂が入っている。 自分の魂をパーテーションで区切り混ざらないようにしながら保存して、必要な時に薄切りにして取り出してソウルアーマーにしてるんだ。 『岡村の会社に取り込みが出来る者がいるのか。生者なのに大したものだ。これは霊同士でも難しい。岡村の言う通り、取り込めば魂は混ざってしまう、……(おさ)が、どうして魂を取り込んでも無事で、しかも自身の霊力(ちから)に出来るのか。それは取り込んだ魂が(おさ)の魂と混ざる前に、霊力(ちから)でもって先に破壊しているからなんだ』 「破壊……?」 『そうだ。そもそも魂は霊力の集合体だ。その集合体に人格や記憶といった情報が膨大に書き込まれている。異なる魂が接触し混ざり合うと、互いに有する情報も混ざってしまう。すると魂は己が何者かが解らなくなるんだ。解らなけれは解ろうと情報を欲し、互いの情報を奪い合う。奪い合い更に混ざればますます解らなくなる。愛した者を忘れてしまい、代わり、知らない誰かの言葉が溢れ出す。そうやって最終的に……己を完全に見失った時、魂は破壊されるんだ』 「………………怖いですね、」 『ああ、怖いよ。普通は出来ない。(おさ)は喰らった魂を……いや、魂が有する情報を破壊するんだ。そうすれば混ざる事はない。情報を消された魂はただの霊力となる。そう、(おさ)が自由に使える霊力(ちから)になるんだ』 そうか……同じ魂を取り込むにも社長のやり方とは違うんだな。 というかこのやり方……昨日の瀬山さんのに似てないか? 2人で修行をしてた時、あの人は僕の構築した鎖を乗っ取った。 ____ご、ごめんね、せっかく岡村さんが構築した鎖なのに、 ____だけどそうだよ、乗っ取ったんだ、 ____キミの鎖に私の霊力(ちから)を入れ、内側から破壊(・・)したの、 ____そしてそれを取り込み、 ____最終的には私の意のままに操れるようにした、 こういう所……親子だな。 鎖と魂の違いはあれど、似た方法で乗っ取りを成功させるんだ。
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