第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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それは僕が使える数少ないスキルのひとつ、癒しの言霊だ。 理屈は掠ってるだろ? 対象をすっぽり丸々包むトコとか(そこだけかもしれないが)。 アーマーじゃないけれど、シールドでもないけれど、包み込むのは間違いない、……って、あまりに単純な発想か。 でもいいの、駄目で元々、考えるだけならタダじゃない。 可能性を探るんだ、そう、ココにいるみんなを巻き込んで。 ハイハイハイハイ! 手を上げて、鼻息を荒くして、僕はみんなに言ったんだ。 癒しの霊力(ちから)を重ねに重ねてみんなを包み、それを防御服みたいに使えないかって。 すると……場が、静まり返った。 みんな揃ってポカンとしてて、その顔を視た僕は一気に汗をかいたんだ。 ヤバ……良い考えだと思ったのは僕だけだった……? やっぱし、重ねた所で”癒し”で”防御”は出来ないか……ア、アウチ。 僕を視ながら気まずそうな表情で、誰も何も言おうとしない。 そんな居たたまれない空気の中、一人の猛者が声を上げた。 森木さんだ。 『えぇっとー、岡村君。キミの癒しの霊力(ちから)を防御服代わりにする、ですか……なるほど、はいはいはい。我々の為に考えてくださってありがとうございます、はい。ですが……(おさ)の破壊の霊力(ちから)は、岡村君の想像以上に強烈です。昔、(おさ)に逆らった者がいたのですが……その時ね、見せしめの為でしょう。わざと取り込まず、皆の目の前で破壊した事がありました。凄まじかったですよ。とてもじゃないが、癒しの霊力(ちから)をいくら重ねても防御出来るモノじゃない。ハッキリ言って不可能です……はい』 だんだん声が小さくなって、申し訳なさそうな顔をして、だけど、無理なものは無理なのだと教えてくれた。 そっか……癒しの霊力(ちから)じゃ、みんなを守る事は不可能なのか。 く……少し落ち込む……だけどそんなの一瞬だ。 だって落ち込んでる暇なんてないもの。 「森木さん、ハッキリ言ってくれてありがとうございます。(おさ)霊力(ちから)、それほどまでに強烈なんですね。僕、他にいい方法がないかもっと考えてみます。思いついたら言いますから、またジャッジしてください」 切り替えて腕を組んで考える。 なにかいい方法は……なんて唸っていると、今度は(かける)君が言ったんだ。 『待ってくれ。岡村の今の案、改善の余地はあるけどイケルと思う、発想自体は悪くない。確かに(おさ)霊力(ちから)は強烈だ、癒しの霊力(ちから)じゃ防御は出来ない。でもさ、癒しの霊力(ちから)の本来の目的は修復と回復だろ? たとえば俺が(おさ)に喰われたとする。取り込まれれば当然破壊が始まるけど、その時、破壊と同時に癒しの霊力(ちから)が修復したらどうなる? 破壊の傍から回復させれば、すなわち霊力(ちから)の相殺になると思わないか?』 霊力(ちから)の……相殺? 今度は僕がポカンとする。 そんな事、本当に出来るの?
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