第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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『なぁ、みんなもそう思わないか? 破壊の霊力(ちから)を修復の霊力(ちから)で無効化させる。これなら(おさ)に喰われずに済むだろ』 興奮気味で力強く、(かける)君はみんなに向かって声を張った。 手練れ達は顔を見合わせ、ザワついている。 空気は心なしか明るくて、この感じ、相殺案は実現可能と思っていいのか? だが……中村さんが黙ったままだ。 目を閉じて、渋い顔で考え込んでいる。 ダメ……なのかな?  そんな上手くはいかないのかな? 教官はどんなジャッジをくだすだろう……? 中村さんがなんて言うかドキドキしながら待っていた。 今はまだ黙ったままで……頭の中でシュミレーションしてるのかもしれない。 急かしちゃいけない、待つのみだ……が。 その答えは意外にも早く聞く事が出来た。 『結論から言えば……”霊力(ちから)の相殺”、この方法で乗り切れる可能性はある、』 おぉっ!! 中村さんの答えに男達がどよめいた。 これで戦える、と熱気が高まる。 だがそれを中村さんが慌てて止めた。 『ああ、待て! あくまで、可能性の話だ(・・・・・・)、皆落ち着け! 知っての通り、(おさ)霊力(ちから)は強烈だ。相殺をするのなら、(おさ)と同等、またはそれ以上の霊力(ちから)をぶつけなくてはならない。となると岡村、お前が鍵になる。希少の子とはいえ、まだまだ新人のひよっこに、そこまでの霊力(ちから)を期待していいのか?』 その問いに、僕は言葉を詰まらせた。 みんな僕に注目する中、一体なんて答えたらいいんだろう? (おさ)と同等、もしくはそれ以上の霊力(ちから)があるのか。 あったとしてもそれを自由に出せるのか、僕には判断がつかない。 「中村さん……ごめんなさい。それはわからないです。僕は希少の子で、瀬山さんや先代は、その……僕の霊力(ちから)は相当強いと言ってくれます。だけど僕は未熟で、たとえ霊力(ちから)が強くても、それを必要な時に必要な分だけ、自分の意思で出せるかといったらわからない。だから自信を持って大丈夫ですと言えないんです」 瞬間的に強くなる時もある。 どうしようもなく腹が立った時とかさ。 でもそれだって毎回じゃない。 僕のせいでみんなを危険にさらすのは絶対ヤダよ。 だから恰好付けずに本当の事を言ったんだ。 『そうか……霊力(ちから)があっても、それをコントロール出来なければ相殺は不可能だ。霊力(ちから)で負けれは、即破壊が始まる。そうなれば(おさ)に益を与えるだけ……残念だ、案は悪くないのだがな』 目頭を強く押さえる中村さんが息を吐くと、男達のため息も重なった……が、ただ一人、ため息をつかなかったのが(かける)君だ。 彼は中村さんを正面に、必死になって訴えた。 『それならさ、瀬山さんに霊力(ちから)を借りようよ! あの人は(おさ)の息子だし希少の子、そのくらい余裕で持ってるだろ! 瀬山さんの霊力(ちから)と岡村の癒しの術があれば何とかなるんじゃないか? なぁ中村さん! そうだろ!? イケルだろ!? 瀬山さんに頼もうよ!』
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