第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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なんとしても策が欲しい。 (かける)君の気迫は、もはや鬼迫に近かった。 『確かに、彰司さんの霊力(ちから)があれば相殺は可能だろう。だがどうやって頼む。(おさ)は彰司さんを憎んでる。目の前で彰司さんと話をしてみろ。激高し、我々はあっという間に喰われてしまう。かといって、彰司さんだけをどこかに連れ出すのも不可能だ。(おさ)の目が光ってる。ゆえに密に話すも叶わない、』 『……ッ! じゃあさ! 俺が囮になる! 俺が(おさ)を引き付けておくから、その間に中村さんが頼んでくれよ!』 『囮だと……? まだ策が無いんだぞ? すぐに喰われるのが目に視えてる、何秒も稼げまい。それなのに、僅かな時間を得る為に(かける)が犠牲になると言うのか? 馬鹿な! そんな事はさせられない!』 『じゃあどうすんだよ! こんなチャンスないだろ! 今までさ、俺達はずっと怯えてたじゃないか! いつ(おさ)に喰われるかわからない、それが怖くて言いなりで、生者を襲い、悪事に手を染めたんだ! もうやだよ! 最期くらい戦いたいよ! その為なら俺、犠牲になっても構わない!』 掴みかかる勢いで(かける)君が叫んだ。 中村さんも負けてない。 『犠牲だと? 生意気言うなっ! だったら私が行く! (かける)のような小僧では、囮になってもすぐに喰われて役に立たない! 囮はな、私くらいの老練でなければ務まらんのだよ!』 二人は激しく怒鳴り合う。 僕もみんなもどうしていいかわからずに、『落ち着いて』とかなんとか、言葉をバラバラにかけていた。 そんな時、いつだってマイペースな猫又が『うな……』と一言、不機嫌そうに鳴いた。 長い話にお姫は飽きて、地面に寝ころびうたた寝をしてたのだ。 霊体(からだ)は起こさず片目を開けて、『うるさいニャァ』と不満な顔で、お得な三尾をブンブンと振った。 泳ぐ尻尾は僕の足やらオシリやら、ペシペシバシバシぶつかって、それで……そう、気が付いたんだ。 ジャージのパンツ、ポケットに何かある。 なにこれ、硬いな、なんか入れっぱなしにしてたっけ? んー、…………………………あ、 『小僧は引っ込んでろ!』 『オジサンこそ休んでろ!』 両者一歩も譲らずに、ガルガルしながら怒鳴り合ってる。 僕はそこに近付いて、エイヤッ! の気合いで割り込んだ。 2人を止めるんだ、止めて、話を進めなくっちゃ。 「あの! ちょっといいですか? 2人とも落ち着いてください。……って、元はと言えば、僕の霊力(ちから)不足のせいだよね。ごめんなさい。それでね、話の続き、霊力(ちから)の相殺の件ですが、要はココに瀬山さんの霊力(ちから)があれば良いんですよね?」 不意の乱入、鼻息荒めで聞いた僕に、中村さんも(かける)君も『お、おう』と、控えめながらも答えてくれた。 「えっとですね、実はココに(ゴソゴソ)……”瀬山さんの霊力(ちから)”があるんです」 ジャージのパンツのポケットの、中にゴソゴソ手を突っ込み、取り出したるは光る珠。 クリーム、雪色、金色のマーブル模様が美しい。 (ココ)まで来るのに、霊視の代わりに使ったチカラ。 瀬山さんと大福と僕の霊力(ちから)を混ぜて丸めた塊だ。
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