第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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『岡村……今なんと言った……? その珠が(・・・・)彰司さんの霊力(ちから)だと言ったのか?』 唖然たる顔をして、中村さんが僕に聞く。 「そうです。この珠は、瀬山さんの霊力(ちから)を僕の霊力(ちから)で繋いで丸め、更に強度を増す為に、猫又の妖力を練り込んでいます」 『猫又とは其処で寝てる三尾の事か。……岡村は何故そんな物を持っている……』 「ああ、それはアレですよ。言ったでしょう? 僕は霊視が出来ないって。視えない代わりに地道にコツコツ。この珠を使い瀬山さんの霊力(ちから)を追ってきたんだ。おかげでどうにかこうにか(ココ)まで来れた。 それで……どうでしょう? この珠があれば相殺出来ますか? 瀬山さんの霊力(ちから)に余計な霊力(ちから)も混ざってるけど大丈夫ですかね?」 この珠。 原材料は100パーセント瀬山さんです! と、言えれば良いけど、なんてったって僕と猫が混ざってる。 そこがちょっと心配だ。 きっとまた、中村さんは渋い顔で考え込むと思っていたのに。 『ばっ……! いや、失礼、……余計な物だって? そんな訳ないだろう! 希少の霊力(ちから)が2人分、それに加えて三尾の妖力まで混ざってるんだ! これがあれば破壊の霊力(ちから)を相殺出来る! 喰われる事を恐れなくていい!』 叫ぶようにこう言ったんだ。 途端、野太い歓声が上がった。 みんなは地面を足で鳴らし、次々武器を構築し、今にも飛び出していきそうだ。 その中でも特に(かける)君は大変だった。 ぱぁぁぁぁぁっと顔を輝かせ、あちこち苦内(くない)を飛ばしてる……って、ちょ! 危ないから! それからみんな、急ピッチで準備したんだ。 まず最初に手をつけたのは、マーブル模様の霊力(ちから)の珠を大福先生の口に放り込む事だった。 「大福、この珠を28個に分けてくれる?」 僕がそうお願いすると、虎の子サイズの猫又は『うな、』と頷きパクッと食べて、豪快に噛み砕く。 で、充分噛んだその後は、ゴクッと飲み込みキッカリ10秒。 大福は下を向き、ケポ、ケポ……ケポケポケポ……んげーと吐き出した。 地面を視れば、マーブル模様の小さな珠が28個。 キラキラと輝き瞬きながら小山を作っていた。 さすがは大福、良い感じにわけてくれた。 あとはコレをみんなに配って…… 「みなさーん! お待たせしましたー! 相殺の為の第一歩! まずは1人1個ずつ! 霊力(ちから)の珠を飲み込んでもらいまーす! さぁ! お薬の時間でーす!」 僕がふざけてそう言うと、あらやだ、みんな素直すぎ。 男達は縦一列に、いそいそと並び始めたのだ。
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