第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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____ドクンッ! ドクンッ! ドクンッ!  ____ドクンッ! ドクンッ! ドクンッ!  槍でこさえた空間は、男達の心臓の音で溢れていた。 命を持たぬ27人……その心臓が動くはずがない、刻むはずもない。 だが確かに、冷たい胸は強い音を響かる。 重なる音が鼓膜を揺すり、中で延々跳ねている……不思議な事にうるさくは感じない。 それどころか心地好いとさえ感じていた。 …… ………… ……………… 少しの時間が経過して、心音だけが響いていたのが、そのうちみんなが騒ぎ出した。 『えぇっとー、なんだか胸がドキドキします、はい』 『な、なんだこりゃあ……俺は岡村に恋でもしたのか……?』 『懐かしい感覚だ……生きてた頃、よくこうして動機がしてた』 『岡村、俺、燃えてるのかな! 心臓がドッキドキだ!』 霊力(ちから)の珠を(小粒版)飲み込んだ男達。 少しすると彼らは全員、胸に手をやり高鳴る鼓動に戸惑っていた。 なんでこんなにドキドキするんだ? と聞かれたけれど、僕にも理由がわからない。 代わり、同じように胸に手をやる中村さんが、それに答えてくれた。 『おそらく副作用だ。我々のような凡霊が、欠片と言えども凄い霊力(ちから)を飲み込んだのだ。霊体(からだ)がびっくりしたのだろう。だが心配ない、時期に慣れる。慣れれば音は静まるはずだ。激しく感情が昂りでもしない限り、通常に戻るだろう』 そ、そか、良かった。 副作用と最初に聞いてビビったけれど、問題ないなら安心したよ。 飲み込んでもらったのは、うっかり失くさないよう、確実に持っていてほしかったんだ。 ジャッキーさんの魂に、光る道の欠片が癒着するみたいにね。 大福が分けてくれた28個の霊力(ちから)の珠は、僕の分だけ少し大きい。 みんなの珠は小豆くらいの大きさだけど、僕のは花豆に近いかな。 その花豆を斜めに咥えた大福がガブリ、これで小さな穴を開け、僕の霊力(ちから)で作った細い霊鎖を通してあげたらペンダントに早変わりだ。 生者の僕は霊力(ちから)を飲んでも魂に癒着しない。 (どういう仕組みか知らないけどそうらしい。ジャッキーさんも黄泉の国にいるうちに飲み込んだ)。 だからこうして失くさないよう首から下げるんだ。 再び、みんなに縦一列で並んでもらった。 増幅の印を先に結び、僕の霊力(ちから)を引き上げて、そして一人ずつ順番に癒しの霊力(ちから)で包み込む。 この時、みんなが飲んだ霊力(ちから)の欠片と、僕が持つ霊力(ちから)の欠片……その両方から霊力(ちから)を吸い出し混ぜて使った。 「ふぅ、これで全員ですね。癒しの霊力(ちから)で包み込めた。この術は、僕がずっと手をかざしてないと解けちゃんんだけど……(ジロジロ)、解けてる人は……(ジロジロ)、いない……かな。うん、大丈夫そうだ」 本当はさ、癒しの言霊を使う時、僕の両手を対象者にあてがってないとダメなんだ。 手を離せば術は終わる。 だけど……どうやらうまくいったみたい。 手を離しても発動してる。 これが……希少の子の霊力(ちから)の使い方なんだな。
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