第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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27人全員、無事に癒しの霊力(ちから)で包み終えた。 そこでみんなに集まってもらい、霊力(ちから)について補足説明をさせてもらう。 こういうの、サラリーマン時代を思い出すな、まるでプレゼンしてるみたい。 「癒しの霊力(ちから)が発動したまま(おさ)に喰われた場合、破壊が始まると同時に修復が始まります。これはさっき、(かける)君と大上さんが検証してくれました。ただ……ごめんなさい。時間がなくて細かく検証が取れない為、(おさ)の中でどのくらいの時間耐えられるのかがわからない。ある程度の時間は確保出来ると思うけど、それでも、取り込まれたら僕がすぐに引っ張り戻すつもりです」 おぉ! またも野太い歓声が上がった。 その声が収まるのを待って、僕は続きを話す。 「引っ張り戻すにあたり、みなさんは何もしなくて大丈夫です。僕が勝手に引っ張りまのでリラックスして身を委ねてください」 ここまで言うと、中村さんが質問を投げてきた。 『岡村はさっきから”引っ張り戻す”と言うが、どう引っ張るんだ? 我々に縄でもつけておくのか?』 「遠からずです。みんなは知ってると思うけど……って、僕がコレ知ったのついこの間なんけどさ。同一人物の霊力は、離れた2つの場所にあったとしても互いに引き合いますよね、この性質を利用するの。さっき、みんなに瀬山さんと僕と大福の霊力(ちから)の欠片、これを飲んでもらった。そして僕も同じ欠片を首からぶら下げてる。同じ霊力(ちから)を所有してるんだ」 と、そこへ(かける)君が割り込んできた。 『霊力(ちから)が引き合うっていうのは聞いた事はあるよ。そのチカラを使って(おさ)の中から引っ張ってくれるのか。大丈夫か? 引き合うと言う割には、今引っ張らないじゃないか。同じ欠片を28人、それぞれバラバラに持ってるのに』 「それに関しては多分だけど……霊力(ちから)同士、ある程度の距離まで近づくと、同じ場所にいると認識して引き合いが止まるんじゃないかな。そこからまた距離が出たらまた引き合う、みたいなさ。あとは霊力(ちから)の大きさも関係ありそう。飲んでもらったのは小豆くらいのちっさいヤツだし」 『ふぅん……じゃあさ、ちっさい小豆で本当に引っ張れるのか? ヤダぜ? (おさ)に喰われて修復されて、だけど外には戻れない、(おさ)の中にずっといるなんてキモチワルイよ』 「あ……うん、確かにキモチワルイね。だけど大丈夫。引っ張る道具に霊鎖を使うつもりだから。僕の構築する鎖はそこらを彷徨う霊をオートで探して拘束するんだ。鎖だけを用いれば、中の(ひと)はもちろん(おさ)まで一緒に連れてきちゃう。だけど鎖に欠片の霊力(ちから)を流し込めば、同じ霊力(ちから)を有する(ひと)限定で探す! たとえ(おさ)の中にいても!……検証してないからたぶんだけど、きっと出来る、出来るといいな、神様お願い……って、あっ! ゴメン! そんな不安そうにしないで! ダイジョブ! ダメなら僕が直接出しに行くから! (おさ)の口に手ぇ突っ込んで助け出すから!」 『…………ぷはっ! なんだよそれ!』 そう言ってゲラゲラ笑う(かける)君は少年そのものだった。 良い顔で、楽しそうに、霊体(からだ)をくの字に曲げている。 僕はその姿が嬉しくもあり、切なくもあった。 が、この後すぐに、切ない気持ちも吹っ飛んだんだ。 若さって怖いよ……(かける)君は、とんでもない事を言い出した。
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