第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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『ふぅん、わかった。もし俺らが喰われたら、岡村が責任持って出してくれるんだよな?』 (かける)君は片目を瞑り、挑発的に僕を視る。 「うん、もちろん。いつでも霊鎖が出せるようにしとくつもり」 (かける)君は答えた僕をしばらく視つめ、ニヤリと笑ってこう言った。 『なら安心だ。俺、喰われるの怖くなくなったわ。だって岡村がいるからな。余裕で腹ン中入れるよ。つーかさ、腹の中ってどうなってんだろ? 中でちゃんと動けるのかな?』 「ん……? なんでそんなコト言うの? 言い方が引っ掛かるな……」 目の前の少年はいたずら小僧の顔つきになる。 この表情……今までさんざん見てきたぞ、社長とか弥生さんがよくする顔だ。 で、こんな顔をした後は大抵ロクな事を言わない。 な、なんか胸騒ぎがする…… 『岡村、決めたわ。俺、長に喰われる事にした』 どうよ! とでも言いたげな。 胸を張って堂々とこう言ったんだ………………はいぃ? 「はぁぁぁぁぁぁぁ!? 何言ってんのぉぉぉぉ!? なんでわざわざ喰われに行くの? 意味がわからないよ! (かける)君って社長なの? 弥生さんなの? オバカなの?」 唾を飛ばす勢いで、僕は(かける)君に詰め寄った。 あのね、喰われて引っ張りだすのはみんなを救いたいから。 なんでわざわざ喰われに行くのよ! 『社長……? 弥生……? 誰それ。まぁいいや、そんなに興奮すんなよ。良い事考え付いたんだ、みんなも聞いてくれ! 岡村がいれば喰われる事も怖くない、思う存分戦える! でさ、作戦だけど、前に中村さんが言ってたじゃん。強い奴とやる時は、一番最初の攻撃が肝心だって。相手が油断してるうちに一発デカイのお見舞いしとけって、なぁ中村さん! 言ったよなぁ?』 『ああ、言った』 短く答えた中村さんは、気のせいか……? 口元が笑ってる。 『だよな! で、そのデカイのだけど。俺、ワザと喰われて(おさ)霊体(からだ)に爆弾を仕掛けようと思うんだ! で、仕掛けたら爆発する前に岡村に出してもらう!』 は、はい……? 「えっと……(かける)君? まとめると、キミはワザと(おさ)に喰われる→(おさ)霊体(からだ)に爆弾……それって(かける)君が構築するの? とにかくそれを設置する→頃合いを見計らい、僕がキミを引っ張り出す→しばらく後……(おさ)は爆発……こんな感じでいいのかな? かな? ……はぁぁぁ、マジか……」 言ってて眩暈がした。 あまりにどうかしてる、正気の沙汰とは思えない。 だが少年は嬉々として、 『正解だ! 頼むな岡村。俺が(おさ)に喰われたら、そうだな……1分、いや、50数えてから出してくれ。それだけあれば強烈なのを仕掛けてこれる』 具体的なコトを言い出した。 「や、待ってよ! そりゃあね、キミが喰われたら引っ張るけどさ、肝心な事を忘れてる。この作戦は未検証のぶっつけ本番。仮定通りにいかない可能性もある。なのに暴走しすぎだよ。助け出すのを失敗したら、キミは(おさ)と一緒に爆発しちゃう。なにかマズイ事が起きた時、僕のスキルじゃ救えないかもしれないんだ! 危険だよ、僕は反対だ! みんなもそう思うでしょ? 中村さんも!」 当然、僕はみんなも半ギレで頷くものだと思ってたんだ。
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