第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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なのに……なのにさぁぁぁぁ! 『えぇっとー、少々無茶な気はしますが、効果は期待出来ますね、はい』 『良いんじゃねぇの? 仮に失敗したって無駄じゃねぇ』 『そうだな、(おさ)を道連れに出来るんだ、ちっとも無駄じゃない』 『若い頃を思い出す……俺もよく無茶をしたっけ』 ちょ、ちょ、ちょ、ナニ言ってんの? 爆発だよ? 木っ端微塵だよ? 普通に話す内容じゃないよね? 瀬山の霊媒師って無茶な人が多いの? みんな無茶で感覚マヒしてんの? 「中村さん! なんとか言ってやってくださいよ!」 最後の砦、僕は教官に助けを求めた。 どうかこのクレイジー野郎共を止めてください! だが……マヒしてるのはこの人も同じだった。 『(かける)、やってみるか』 『うん!』 わぁ、今のやりとり、日曜日の親子だよ。 ”(かける)キャッチボールするか”、”うん!” 的な。 騒ぐ僕を笑顔で流し、(かける)君と中村さんは過激な作戦を詰めていく。 やれ(おさ)を挑発して喰われるように持っていけだの、霊体(からだ)の中に入ったら心臓に近いトコに爆弾を仕掛けろだの、その爆弾は(かける)苦内(くない)で固定しろだの。 僕は身体を張って止める気で、エイヤッ! の気合いを入れたのだが…… 『えぇっとー、岡村君はコッチです、はい』 と森木さん達に捕まった。 総勢25人だ。 日本で一番の霊能軍団、瀬山の手練れ達は僕に大事な事を教えてくれた。 それは、ただでさえ話の長い(おさ)だが、さらに長く、気持ちよく喋って頂く方法だった。 「えぇ……そんなの聞かなくていいですよぉ」 どうせ教えてくれるなら、(おさ)以外の話がイイです。 そんな希望もあえなく却下、僕と同じ霊矢使いの野崎さんが笑いながら言ったんだ。 『まあ、そう言うな。(かける)(おさ)に爆弾を仕掛ける間、喋らせとけば時間稼ぎになる。途中でイヤになるだろうが我慢しろ。で、長引かせる方法だが、とにかくショボクレるんだ。落ち込んだ振りとか、なんだったら泣き真似も効果的だ。とにかく(おさ)は自分が喋って相手が凹むと喜ぶ。それでごくたまに、ちょっとだけ言い返す。そうすれば延々だ、延々に喋る』 「う、うわぁ……厄介な(ひと)でねすねぇ、性格悪いよ。だってさ、要は相手を追い詰めるのが好きって事でしょう? ……てか一つ聞いてもいいですか? みんな(おさ)は凄い霊力(ちから)を持ってるって言うけど、僕まだ(おさ)霊力(ちから)を視てないんですよね。視たのは一人喰らったトコだけ。そりゃ捕食スキルも怖いけど……(おさ)って本当に強いんですか? 僕には喰って怒鳴って喋ってるだけのお爺さんに視えるんですが、」
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