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◆
上る煙を食い入るように視つめていた。
が、走りに走ってだいぶ距離があるせいで、長が今、どうなっているのかよく視えない。
だが煙の勢いなら此処からでもわかる。
あれだけの量だ、仕掛けた爆弾は相当な威力だったのだろう。
その爆弾を霊体の中で爆発させたんだ。
いくら長が強くても、これはタダではすまないはずだ。
だってそうだろ?
ゼロ距離からの爆弾は避けようがない。
普通の霊なら木端微塵で無に帰る。
さすがに、相手が長じゃそう簡単にいかないかもだが、深い痛手は負ってるはずだ。
どうなったのか視に行きたい所だけど、それよりも先にやる事がある。
そう、まずは……僕は翔君の前に回り込む。
そして頭の先からつま先まで、そりゃあもうジロジロベタベタ、視て触って、全身隈なくしつこいくらいにチェックしたんだ。
「んー…………うん、特に怪我はなさそうだ。はぁぁぁぁぁ、良かったぁぁぁぁぁ……! ねぇ翔君、気分はどう? どこか痛いとか気持ち悪いとかない? 吐き気とか眩暈とか、そういうのも大丈夫?」
声を掛ければされるがままの少年は、へへっと笑い嬉しそうな顔をした。
『大丈夫だよ。岡村は心配性なのか? 怪我はしてない、だってお前の霊力が守ってくれた。どこも痛くない、気持ち悪くもない。もちろん吐き気も眩暈もない。ん? 気分か? 気分は……はははっ! そりゃあサイコーだよっ! デカイのかましてやったんだ! 俺の爆弾! 長の中に、ちゃちな苦内で留めてきたんだ! 視ただろ? 木端微塵だ! やったぜ! ……なぁ、アリガトな。こんな事が出来たのは岡村のおかげだ……あっそうだ! 猫っ! お前もうまいコト岡村を隠してくれてアリガトな!』
ぱぁぁぁっと顔を輝かせ『猫! 猫!』と言いながら、虎の子サイズをワシワシと撫ぜる。
撫ぜられた大福はまんざらでもなさそうに、ふふんと目を閉じ尻尾を振った。
翔君、すごく嬉しそうだな。
そんな様子に僕まで嬉しくなってくる。
目線を変えれば、遠くの煙はもうもうと立ち上り、風の無い今、散る事もなくそこに留まり続けていた。
そんな視界の片隅に、猛スピードでこちらに向かって走りくる男が二人。
あれは……
『岡村君ーーーーっ!』
『岡村さんっ! 大ちゃんっ!』
やん!
大好きな先代と瀬山さんじゃなーい!
2人はすこぶる焦った顔で、僕らの元に到着すると、
『何があったのか説明してちょうだい!』
『今の爆発はなに!?』
から始まり矢継ぎ早に質問された。
んもう、いつもの余裕はどこにいったでありますか。
2人の質問が多すぎて、どれから答えりゃいいのやら。
なので出来るだけ手短に、みんなで話して決めた事を説明したんだ。
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