第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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「しかしキモチワルイな……ねぇ中村さん、あのイソギンチャクと蛇が合体したようなアレ、やっぱり(おさ)ですかねぇ? それとも(おさ)が構築した謎の生物とかかな?」 キビキビと斬り込み隊に指示を出す、そんな中村さんの話がひと段落ついた隙に聞いてみた。 すると、 『あれは(おさ)だ。(おさ)は死後半世紀で首から下がない。いつもなら俺達の誰かか……もしくは山を下りて(ヒト)を喰らい仮の霊体(からだ)を構築する。だがその霊体(からだ)(かける)が壊した。爆弾で木っ端微塵にしてな。そのままくたばってくれたら良かったが、首だけが残った。おそらく寸前で霊体(からだ)を切り離したのだろう。もう一度霊体(からだ)を構築するには俺達の誰かを喰う必要があるが、残念ながら俺達は此処にいる。人の霊体(からだ)を構築するには人の魂が必要なんだ。それで……霊力(ちから)を使って構築したんだ、霊体(からだ)の代わりになるものを。それがアレだ』 真っすぐに(おさ)を視て、そう教えてくれた。 「そうなんだ……でもさ、なんで蛇なんですか? しかも……霊体中(からだじゅう)に小さな蛇がビッシリついてる。キモチワルイよ」 『確かに、視ていてあまり気持ちの良いものではないな。何故蛇か、か。それはこの50年、(おさ)は喰らい続けていたんだよ。山の蛇を、命があれば殺して喰らい、なくて彷徨う蛇がいればそれもまた喰らう。その数は……50年だ、想像だけで胃液が上がる』 「…………50年、蛇を喰い続けてたの……? じゃあ……巨大な蛇の霊体(からだ)も、イソギンチャクみたいな小さな蛇も、元はと言えば、この山にいた蛇たちなの? (おさ)はヒトだけじゃない……蛇まで喰らっていたのか……酷いな……」 『蛇だけじゃない、他にも沢山喰らっていたよ。動物の魂は人程ではないが霊力(ちから)にしやすい。(おさ)は消滅するのを極端に恐れていたからな。____岡村、あの蛇には気を付けろ、』 眼光鋭く、気を付けろと僕に言う。 もちろん! だって僕のスキルは(ry 「わかりました。あんな巨大な蛇に乗っかられたら潰れて死んじゃうもの。気を付けます」 『岡村、違うんだ。本当に気を付けなければならないのは巨大な本体じゃない。霊体(からだ)に生えてる小さな方だ』 「え……そうなの? 小さいのに? どうして?」 距離があってアレだけど、生えてる蛇はおそらく、ペットショップや動物園にいる子達と同じくらいのスケールだ。 あのくらいなら、いくら僕でもなんとかなると思うのに。 僕ってそんなに頼りないかな。 『ああ、それはな、』 言いかけた中村さんだが、その続きは(かける)君の大声に中断された。 『蛇野郎が動き出したっ! 中村さん! (アレ)が動いたら行っていいんだよな! 第一班! 斬り込み隊出撃するっ!!』 ザンッ!! 8人の男達が一斉に飛び上がり、着地と同時に走り出した。 その背中は殺気に満ちて、あっという間に小さくなる。 「みんな……気を付けて……!」 僕は祈りの言葉を口から漏らし、同時、増幅の印を結ぶと霊鎖の準備を始めた。 もしも誰かが喰われたら、絶対に僕が助け出す。 (おさ)なんかに渡すもんか。
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