第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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中村さんの答えを聞けないまま、僕は斬り込み隊の動きを視続けていた。 此処から蛇まで目測、20から30メートル。 少し距離はあるけれど、30過ぎてもいまだ視力は2.0。 肉眼だって余裕で視える。 蛇は鎌首もたげて揺れていた。 霊体中(からだじゅう)に小さな蛇を生やしているが、唯一、顔には生えていない。 代わり、不揃いな無数の瘤が顔一面に張り付いて、そりゃあもうボコボコもいいとこで……思わず直視を避けてしまう。 もうさ、なんなの?  (おさ)のセンスは最悪だ。 顔はボコボコ、霊体(からだ)全体イソギンチャクって、趣味が悪いにも程がある。 どこから視ても気持ちが悪く、湧き上がる生理的嫌悪感……これをなんとか押さえつけていた同刻。 斬り込み隊が蛇を囲み配置についた。 最初に動いたのは(かける)君だった。 彼は蛇の正面に立つと、顔を思いっ切り上に上げた。 そして、 『なぁ、俺の爆弾どうだった?』 挑発的に……否、挑発しまくりで大声を上げた。 斬り込みってそっち? 霊術じゃなくて口頭?  や、なにか考えがあるんだろうけど、大丈夫なのか? だって空気が変わったよ。 怒りの空気が離れたココまで流れてくる。 まんまとやられた爆弾ネタを振るなんて、(おさ)、ガチギレしそう、怒りまくってすぐにでも喰らいに来そう。 僕はいつでも霊鎖を出せるように準備しながら、(かける)君の動向を視守っていた。 『”ちゃちな苦内(くない)で私に挑むのか”とか言ってたよなぁ? 俺、アンタの中に入ってさ、構築した爆弾、そのちゃちな苦内(くない)で固定したんだ。悔しいか? だけど言っただろ? ”やってみなくちゃわからない”って』 構えもしない。 力を抜いて、下手をすればだらしのない立ち方で、(おさ)に向かって挑発を続ける。 (かける)君以外の男達は、長く伸ばした蛇の霊体(からだ)の側面に立ち、挑発的なセリフを聞くたび馬鹿にしたように笑っていた。 この感じ、覚えがある。 (ココ)に来てすぐ、彼らは瀬山さんを”心中”と呼んで笑った。 嫌な空気を醸し出し、侮蔑と嘲笑を織り交ぜて、しつこく何度もそう言った。 すごく気分が悪かった……けど、瀬山さんはそれに対して、沈黙で耐えきったんだ。
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