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生者の頃から向けられ続けた人の悪意に、耐える術を覚えていたのか。
それとも、父親の性質を熟知するが故、そう言わざるを得ない事情を察したのか。
正確なところはわからない……けど、瀬山さんは優しい人なのだ。
事情を察し、本音を察し、だからこその沈黙だったのだろう。
だがしかし……優しい人の父親が、同じく優しいとは限らない。
『ちゃちな苦内、ちゃちな銃、ちゃちな薙刀、ちゃちな斧、まだまだあるぜ? アンタは俺らをちゃちな駒だと思ってるんだろう? 喰われるかもとビクビク怯え、這いつくばって従うだけの都合の良い消耗品。だけどそれも今日でお終いだ。俺らはアンタと刺し違える気満々だからな』
辛辣なコトバが滝のように溢れ出る。
少年の挑発、薄く笑う男達。
中村さんは黙って視てる、他のみんなもおんなじだ。
考えあっての事なのだろう、けど詳細がわからない。
おおまかな説明はされたけど、斬り込み隊がああ出るとは聞いてない。
情報不足の不安感と徐々に強まる違和感で、僕の喉はカラカラだ。
違和感……そうだ、僕は今、漠然とした違和感を感じている。
翔君達もそうだけど、気になるのは長の方だ。
此処から視える巨大な蛇は、ユラリユラリと揺れてるけれど、睨みを効かせているけれど、まだ一言も発してない。
言いたい放題言われてるのに、プライドめちゃくちゃ高そうなのに、話し出したら止まらない、あの長がだんまりだ。
そして思い出す、森木さんが言ってた事を。
____長の口数が少なくなったら気を引き締めなさい、
____長が口を閉ざしたら、その時は全力で逃げなさい、
もしかして……それが今なのか?
長の口数が減ったのか、それとも口を閉ざしたのか、すぐに判断はつかないけれど、危険な状態であるのは間違いない。
「中村さん、さっきから長が喋らない。これ……援護に行った方が良くないですか?」
焦る気持ちが声に出た。
斬り込み隊がピンチになれば、第2陣が行くはずだ。
なのに静観に徹してる。
中村さんは真っすぐ前を向いたまま、
『まだだ、タイミングは今じゃない。岡村はいざという時の為、鎖の準備だけしててくれ』
そう言って口角を上げた。
今じゃない、か……不安ではあるけれど、中村さんが言うのならと言い聞かせ、僕は再び斬り込み隊に目線を向けた____と、その時だった。
もたげた鎌首。
瘤が集まるその顔の、横に裂けた大きな口から、短く、一言、低い声が発っせられた。
『…………言いたい事はそれだけか、』
チロチロと赤い舌を出し入れしながら、怒気の目が翔君を凝視する……も、そこから半瞬、そう、たったの半瞬後。
蛇の霊体がゾワリと蠢き膨らんだ。
首から下にビッシリ生える数多の蛇が、右に左に霊体をくねらせ一斉に騒ぎだしたのだ。
瘤の中の赤い眼が、少年を射るように視下していた。
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