第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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倒れたままの大鎌使いは肌の色がド紫、分厚い胸は激しく上下に動いてる。 その横で、膝をつくのは回復担当大橋さんだ。 『杉野さん! しっかりしてください!』 彼は必死に声を掛けながら、眩く光る両手のひらを杉野さんの霊体(からだ)に当て続けていた。 「中村さん……杉野さんは大丈夫でしょうか、」 目が離せない、僕は心配で不安で仕方がなかった。 あんな顔色、只事じゃあない。 中村さんは僕の事をチラリと視ると『説明する、少し待ってろ』と後ろを向いて、待機の男達に大声を張った。 『第2班! 第3班! そろそろ出番だ、準備をしてくれ!  視ての通り、(おさ)の小蛇は杉野がほとんど刈ってくれた! だがすべてじゃない! まだ残っているから油断するな!  第2班は私が”行け”と言ったら速やかに前進! 現場では二手に分かれ(おさ)霊力(ちから)を出来る限り削る事! 此処でどれだけ削れるかが勝敗の鍵となる! 心してくれ! 第3班! お前達は現場を円形で取り囲め! 1班2班の1人1人の動きに合わせて徹底的に援護しろ! 仲間から決して目を離すな! いいか、お前達は中心(なか)で戦う奴らの守護なんだ! 無傷で戦わせるくらいの意気込みでやれ!  尚、現時点で杉野は大橋が治療中だ! 杉野は我々の為によくやってくれた! 奴の霊体(からだ)が5割戻った段階で一旦撤収させ、残りは岡村に託し全回復後に現場に戻す! 回復班は継続して現場にとどまる! そしてさっきの(かける)を視ただろう? もう(おさ)に喰われる事を恐れなくていい! 俺達には岡村がいる! 思う存分暴れてくれ! 以上だ!』 オォォォォォッッ!!! 第2班、第3班、手練れ達は一斉に野太い声を上げた。 中村さんのさっきの指示は、声の大きさ、表情、抑揚からして演説に近かった。 男達の顔は一変、闘争心剥き出しの鋭い目付きでギラついている。 鳥肌の立つ強い圧だ。 (おさ)がどれだけ凄いか話でしか知らないが、この人達なら勝てる、僕は心の底からそう思ったんだ。 目線を上げれば、地に倒れる杉野さんは顔色がだいぶ戻っていた。 呼吸も落ち着き、胸の上下が穏やかになっている。 良かった……これで杉野さんは回復する。 大橋さんってすごいな、あの手のひらは(ひと)を救うんだ……と、その手を視れば、さっきの杉野さんと同じように、ド紫に染まっていた。
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