第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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第2班と第3班が今か今かと出陣を待つ中、斧とこん棒コンビが蛇を相手に暴れまくっていた。 巨大な蛇は背中の小蛇のほとんどを失って、怒り狂って宙を飛ぶ。 その動きはジェットコースターを連想させるも……ヤダ絶対、(おさ)コースターなんて頼まれたって乗りたくないわ。 上昇からの急降下、開いた口が速度を持って襲い来た。 狙われたのは斧使いの林さんだが間一髪。 力士ライクな巨大な霊体(からだ)を毬のように飛び跳ねさせて、両手で持ったドデカイ斧を着地と同時に振り切った。 ギャッッ!!  短いけれど激しい叫び、叫んだ(おさ)は横の腹を大きく裂かれ、黒い液を垂れ流す。 垂れた液はみるみるうちに凝固して、開いた傷口が塞がりかけた。 だが(おさ)の自己治療は成功をおさめなかった。 こん棒使いの高野さんがそれを許さなかったからだ。 高野さんの攻撃は超シンプル、塞がりかけた傷口をしこたま殴打。 殴打の数が執拗すぎて回復が追いつかない。 負傷の蛇は苛立ちながら高野さんを振り切ると、宙に上昇、一旦退いて修復を優先させるらしかった。 そこから少し離れた場所。 そこでは治療を終えた杉野さんがノソリと起き上がる所だった。 『悪いな……大橋、助かったよ』 頭を左右に軽く振り、お礼を言った杉野さんだがまだ本調子ではなさそうだ。 中村さんは5割の回復で一旦戻すと言っていた。 来てください、大丈夫、あとは僕が回復させます。 活躍の大橋さんは両手をド紫にさせてるものの、特段弱ってるようには視えなかった……が、腕はダラリと下げたままだ。 大丈夫かな……? そして大橋さんの相方、近藤さんといえば。 千切れた小蛇を乗せたまま、ドデカイ防御陣を1人で支えていた。 傍には(かける)君、ガンマンの大上さん、そしてノコギリ使いの長澤さんもいる。 何を話しているんだろう? 僕のいるこの場所から、ギリギリ声が聞こえてくるのは大橋さんがいるトコまで。 それより距離のある近藤さん達は、音としては聞こえるけども、内容までは分からないんだ……が、動きは視える。 目線の先。 近藤さんの両手がカッと眩く光り、平たい防御陣がグシャリと丸まった。 おそらく大量の小蛇も一緒に丸めたのだろう、地面には一匹も落ちていない。 そこに(かける)君が近づいて、丸めた陣に手をかざす。 どうやら霊力(ちから)を流してるみたいだ。 さらにそこに大上さんも近付いて、手振り身振りで何かを話し……と思ったら急に(かける)君達が駆け出した。 残る大上さんは防御陣に腕を伸ばす。 何か持ってる、あれは……銃だ、 大上さんは斜に構え、 丸めた陣に銃口を向け、 迷う事なく発砲した、 直後。 ドカンッ!!!! 耳を(つんざ)く爆発音。 凶悪なキャンプファイアの如く炎が上がった。 何今の…… 僕が茫然と視ていると、激しい炎を背に背負って、杉野さんがこちらに向かってくる所だった。
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