第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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絶対に杉野さんを回復させる。 固く決意し、まずした事は無駄に焦るのをやめる事だった。 焦った所で良い事なんて何もない。 ゆっくり落ち着き確実に、僕は杉野さんに癒しの霊力(ちから)を使い続けていた。 その間、僕達はたくさんの話をしたんだ。 『昔からだ。大上は何かにつけて銃を撃つんだ。さっきもそうだっただろう? 近藤が封じた小蛇、(かける)霊力(ちから)で滅そうとしたのに、「それじゃあ時間がかかる」などと思いっ切り撃ちやがった』 ははは……確かに撃ってた。 聞けば相当なガンマニアで、リアルを無視した改造に日々勤しんでいるという。 てかやりすぎ、撃っただけで大炎上とかどんだけ威力上げてんだ。 まったくホントに、”瀬山の霊媒師”は無茶するコトがデフォルトなのか?  あ……無茶といえば大橋さんは? 杉野さんを治したあと手がド紫になっていた。 元気そうには視えたけど腕はダラッと下げたまま……心配だよ。 『心配ない。奴の手が紫色になったのは、俺の毒を吸い取ったからだ。あのまま放っておけば俺は毒に侵され消滅しただろう。急ぐ必要があった。今、岡村も俺を治癒しようとしているが中々進まないだろう? (おさ)の毒はしつこい。大橋はそれがわかってたから、”治療”じゃなく”吸収”したんだ。ある程度取り除いてもらえれば俺は助かる。さすがにな、あの量の全てを吸収したら大橋も危ない。だから半分だけ。残りは岡村に託したんだ』 そうだったんだ……吸収なんて危険な事を……ねぇ杉野さん。 毒を吸った大橋さんは大丈夫なんですか? 『大丈夫だ、大橋は毒に対する耐性が強い。時間が経てば奴の霊体(なか)で浄化する。……奴はな、(おさ)の実験体なんだ。(おさ)は新たな毒を構築するたび仲間達の霊体(からだ)を使って検証してた。そのせいで消滅した奴が沢山いた中、大橋だけは消滅しなかったんだ。強いんだよ、毒にな』 毒の実験体!? 嘘だろ? ありえない! いくら耐性があるからと、部下で実験する上司がどこにいる! 大橋さんをなんだと思ってるんだ! (おさ)の話は聞けば聞くほど気分が悪い、最低だ、心の底から大嫌いだ! 『(おさ)が大蛇に変化するのは今日が初めてじゃない。背中にビッシリ小蛇を生やして猛毒をまき散らす。近付く事もままならない、だから最初に刈ったんだ。俺が、みんなが、思いっ切り戦えるようにな。半分も刈れたら良いと思ってた、それが限界だとも。だが(かける)が頑張ってくれた。憎たらしいコトを並べ立て、(おさ)を引き付けてくれた。(かける)が動かなければ(おさ)の軌道が読める。あれだけ刈れたのは(かける)のおかげた』 だから(かける)君、ギリギリまで動かなかったんだ。 生意気な顔をして、(おさ)を煽りまくってた。 それだって危険なのに、僕を信じて、僕がいるからと留まり続けたんだ。 ああもう……この人達って本当にさ、(おさ)さえいなければさ、今は全然違ったのに。
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