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『岡村。治療、ありがとな』
え? っと……いやそんな。
杉野さんを治療するのは当たり前の事だし、むしろ時間がかかって申し訳ない。
僕がんばりますから、だからもうちょっと待ってくださいね。
『時間? そんな事は気にするな。治してくれて感謝してる。だがそれだけじゃない。お前が飲ませてくれた彰司さんの霊力の欠片。あれのおかげでこの程度で済んだんだ。千切った小蛇を浴びてた時、毒が俺を侵し続けた。が、同時に欠片が修復をし続けたんだよ。ありがとうな』
ううん、僕は頭を左右に振った。
それは僕の霊力じゃない、瀬山さんの霊力だよ。
瀬山さんが守ってくれたんだ。
杉野さんを、僕達を。
『ああ、それと。パンも旨かったよ。久しぶりだ、現世の食べ物を味わったのは』
パン……? ああ、あれか!
G・Aネクロマンサーさんの奥さんが持たせてくれたパン。
さっき、槍の中の空間で、僕は4日分のパンをぜんぶ食べてしまった。
止まらなかった、甘みがあっておいしくて胃に染みるようだった。
僕はてっきり、霊力の使い過ぎでお腹が空いたのだと思ってた。
みんなが作戦を練る横で、鎖の構築時間を短くするべく、また、鎖の親玉を極力小さくするべく、1人でずっと練習してたんだもの。
だけどそれだけじゃなかったんだ。
そうか……あのパンは、僕とみんなで食べたんだな。
”召し上がれ”とは言ってないけど、それでも味わえたのは、たぶん、きっと、僕とみんなが瀬山さんの霊力で繋がっているからかもしれない。
ホントのトコはわかんないけど、それでもし味わえたのだとしたら……ははは、なんだろ、すっごくすっごく嬉しいや。
そんな話をずっとしながら、僕は杉野さんを癒し続けていた。
焦っていれば時間は長いが、話していれば短く感じる。
そしてとうとう、長の毒が抜けきった。
2班と3班、送り出した中村さんが聞く。
『杉野、行けるか?』
大鎌使いは僕の肩をポンと叩いて立ち上がる。
『ああ、』
たったの一言。
答えた手練れは巨大な鎌を軽々担ぎ____
____振り返ったその表情は、眩しいくらいに破顔していた。
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