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『1班、2班、3班! 全員無事か、まだ潰れてないだろうな!』
燃える大蛇を置き去りに、中村さんは防御陣まで駆けてきた。
陣の下では文字通り、第2班と第3班が霊柱となり支えているが、上げた両手はブルブル震え、いつ潰れてもおかしくない状態だ。
陣の上には長の梵字が(そう視えるだけで正体不明だけど)積み上がり、その重量を支えるだけで精一杯。
もしもに備えた斬り込み隊の半分は、今じゃ支えにまわってる。
なんとかして邪魔な梵字をどかす必要があるのだが……
陣の下でバンザイポーズ、生意気盛りの17才がいきなり吠えた。
『なんで戻ってきたんだよっ!』
え、えぇ!?
そんなん、みんなを助ける為にきまってる。
感謝こそすれ怒る意味がわからない。
孫ほどの少年に怒られて、困った顔の中村さんだが、それが余計に気に入らないのか翔君は更に吠えた。
『あのまま戦ってりゃ倒せたのに! 俺達の事は放っておけば良かったんだ! 誰が倒したってかまわない、最終的に長を滅するのが目的だろ!』
相当怒ってるな……だけど、真剣な顔とは裏腹に、両手はもうプルップル。
コレ、霊力消費と言うより筋力消費しまくってる。
そんな様子に中村さんは笑いを堪えてこう言った。
『悪かったよ。だけどな、もう戻ってきてしまった』
『だったら! 今から行ってトドメ刺してこいって! 長、燃えてるじゃん! 動けないじゃん! チャンスじゃん!』
プルプルしながら『はよ行け!』と捲し立てたと思ったら、今度は一変、縋るように懇願したんだ。
『なぁ、頼むよ、滅してきてくれよ、今がそのチャンスじゃないか、中村さんならやれるだろ? 俺達は陣から動けない、あ、でも杉野っちと大上さんは動けるよ、一緒にさ、行ってきてくれよ、なにも全員でやらなくたっていいんだ、誰かが滅してくれたらそれでいいんだ、だから、だからさ……!』
必死の願いだった。
翔君こそ、自分の手で滅したいと思ってるだろうに。
なのに行けと言うのか。
助けがなければ、力尽きて潰されてしまうのは目に視えているのに。
見渡せば他のみんなも頷いている。
俺達は放っておけと、チャンスを逃すなと言っている。
だが、老練の答えは否だった。
『私は行かない、先にやるべき事があるからな』
言いながら少し下がって陣を視る。
目線は高く、積まれた梵字をどうやってどかそうか、思案しているように視えた。
『まずはお前達を助ける、そして全員で滅しに行く。翔、今がチャンスと言ったよな。確かにそうかもしれない。だがそのチャンスは誰が作った? お前達だ。翔が長を引き付けて、杉野は小蛇を刈った、大橋が杉野を救い、近藤は陣を支え、大上は小蛇を滅した。そしてみんなで長の霊力を削ってくれた。そのおかげで私は長に傷をつける事が出来たんだ。チャンスはいくらでも作れる。我々が一人も欠ける事無く揃っていればな____そうだろう?』
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