第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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中村さんは(かける)君、そしてみんなを順に視た。 そして、 『岡村が言っていたよ……「信じてる、みんなは(おさ)より強い」と、「必ず勝って戻って来てくれ」とな。(かける)、みんなも聞いてくれ。犠牲になろうとするな、こんな所で終わろうとするな。我々は(おさ)にやられて消滅なんてしない。(おさ)を滅し、(おさ)に勝って、岡村に、清き者に送ってもらうんだ、その為まずはお前達を助けるっ!』 力強くそう言うと、印を結んで手を振り下ろし、大剣二本を出現させた。 両手に握り、弧を描きながら地面で擦ると火花が散った。 その剣をガキンッと激しくバツの形にぶつければ、刀身からは炎が噴き出しゴウゴウと燃え上がる。 陣の高さは地上高2メートルもない。 僕と背丈の変わらない、(かける)君が腕を伸ばして届く高さだ。 その上に黒い梵字が積み上がる。 目測でしかないけれど、陣の高さと同じ分だけ層になっていた。 『もう少し耐えてくれ!』 中村さんはそう言うと垂直に飛んだ。 高さを稼いで梵字に目線が合わさると、左右の腕をクロスに重ねて内から外に振り切った。 ブォンッ!! 途端重たい風が吹く。 その風は重なる梵字を吹き飛ばした。 全部じゃないが、上側の何層かが遠くの地面に転がった。 すごいな……剣圧だけで払ってしまうのか。 老練は、飽きる事なくその作業を繰り返し、しまいに全部をどけてしまったのだ。
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