第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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黒の梵字が取り払われて、よくやく全班、霊柱(ひとばしら)を終える事が出来た。 みんなは腕をさすりつつ、口々に中村さんにお礼を言うのだが……その中でただ一人……って、え? なに? どうしたの?  (かける)君だけはお腹を抱えて笑っていた。 『な、なかむ、あははは、さっきの中村さん! 黒いの、どかすのに、あはは、ビョーンって飛んでた! 剣でさ、払ってさ、だけど、あはは、一回じゃダメで、あはは、またビョーンって飛んで、それ何回も、あはははは、中村さんがビョーンって、ビョーンって、あははははは!』 もう大騒ぎなんだけど……な、なにがそんなにおかしいのかな? かな? 確かにさ、ビョーンって感じで垂直飛びしてた、けどさ、笑いすぎじゃないかい? 中村さん、いっぱいあった梵字を頑張ってどかしてたよ、そりゃあもう何回も何回もビョーンって。 尚も笑う(かける)君を杉野さんがたしなめる。 『(かける)、中村さんは俺達を助けてくれたんだぞ。笑ってないでお礼を言わんか』 さすがは大人、ごもっとも。 杉野さんは厳しい顔で、(かける)君のほっぺたを左右にギューと引き延ばした(この辺はあまり大人ではない)。 『あひゃ、ごめ、杉野っち、俺、ちゃんと感謝してる、だけどさ、思い出すとおかしいんだ、ビョーンって飛んだから、でさ、でさ、あははは、飛んでからシャッ! って、剣を、こう、シャッ! って、あははは』 感謝はしてる、だけど笑いが止まらない、という事らしい。 まぁ、あの子は17才だからねぇ。 若さゆえ、笑いの沸点が低いのかもしれない。 が、ビョーンビョーンと言われちゃってる中村さんも、つられて一緒に笑ってる。 (かける)君を叱ってた杉野さんも吹き出しちゃったし、他のみんなも一斉に笑い出した。 となると僕もなんだかおかしくて、でもさ、どんな時でも笑えるって良いコトだ。 こんな時だからこそ、笑ってみるのも悪くない。
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