第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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『みんな集まってくれ』 中村さんが集合をかけた。 あれだけ笑い転げていた(かける)君も、真面目な顔で傍に寄る。 『此処まで____おおよそ作戦通りと言っていいだろう。(おさ)霊力(ちから)を削れるだけ削る、という目的はおそらく果たせたはずだ。小蛇は刈り取った、お前達の総攻撃を浴びせ、そして今……あの通り、(おさ)は燃えている』 中村さんは顎で後ろを指した。 そこには火力は幾分弱まってきたものの、いまだ燃える炎があった。 火に包まれる(おさ)の姿は、黒く揺らめきよく視えない……が、明らかに形が変わり始めている。 パニック映画に出てくるような、巨大な霊体(からだ)が一回りも二回りも縮んだように視えた。 『(おさ)霊力(ちから)で厄介なのは、毒の小蛇と攻撃力だけじゃない。知っての通り、黒い治癒液だ。(おさ)霊体(からだ)を傷付ければ、粘った液が流れ出て、たちまち回復させてしまう。だが、その霊力(ちから)もだいぶ減ったはずだ、いや、今も減り続けている、』 減り続けてる……? どういう事だ……? ん…………あっ……! 炎か……!  (おさ)はきっと、炎から身を守ろうと、霊力(ちから)を、黒い治癒液を(あの、回復させる黒い液の事、そう言ってたよな)リアルタイムで使ってる真っ最中なんだ! 笑い合ってた間も、今こうして話をしてる間も無駄にしない。 すごい、すごいや! 僕は大興奮で隣の大福を高速でモフモフし、それでも熱は治まらなくて、だから、 「先代! 瀬山さん! 聞いてました!? 中村さんの炎、(おさ)霊力(ちから)を削り続けてるって、」 大好きな二人組に振り返り、テンション高めで話しかけたんだ。 だけど…… 「あれ? いない……」 そこには誰もいなかった。 トゥエンティーエイトマンセルの僕らの戦いを、まずは見守ると、手は出さず、少し離れて後ろにいたずなのに。 どこに行っちゃったんだろう……?
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