2366人が本棚に入れています
本棚に追加
『間もなく____』
中村さんの声がした。
消えたお爺ちゃん二人組も(姿はすこぶる若いけど)気になるが、ひとまず僕はみんなに集中する事にした。
長がいつ襲ってくるかわからないもの。
『間もなく炎が消える。中から現れるのは大蛇じゃない。大きな霊体を保つだけの霊力はもう無いはずだ。次にどんな姿で現れようと、我々のするべき事は一つ。霊力を削って削って削りまくる。そして無に還す、滅するんだ。第1班は積極的に前に出ろ、2班は死角に回り不意を突け、第3班は先ほど同様、1班2班の援護だ。大橋と近藤は負傷者を視てやってほしい。きっと、……これが最後だ。全員で滅し、必ず全員で生還しよう』
静かな声に翔君も杉野さんも、みんなも一斉に頷いた。
一拍遅れて中村さんも、大きく頷きニコッと笑った……のだが、すぐに引き締め素早く視線を前に飛ばす。
そして深く息を吸い込むと、
『来る、』
一言、呟いた。
消えかけた炎はしぶとくて、いつまでも囁くように燃えていた。
長い霊体は随分と小さくなり、黒く焼け焦げ炭と化してる。
時折痙攣くらいはするものの、動きはほぼない。
このまま動かず尽きてくれたら……願わずにはいられなかったが、そううまくはいかなかった。
ボコ……ボコ、ボコ……
これ……なんの音だ?……と眉を寄せたのと同時。
突然、炭が蠢き始めた。
波を打ち小さくひび割れ、内側から突かれたようにボコボコと、炭の霊体は、あっという間に突起だらけになった。
ゾワリとする……視ていて気持ちの良いものじゃない。
だがこれは、ほんの始まりに過ぎなかった。
この後、僕は悍ましいものを視る。
数多の突起は小刻みに震えていたが、その先端から、突起と同じ数だけの蛇が速度を持って突き破ってきたのだ。
「……ウッ……」
胃液が込み上げる。
炭の霊体が視えなくなる程の蛇だ。
一体何匹いるのか見当がつかない。
揺らめいて蠢いて……また蛇を生やすのかと舌打ちをした……が、予想に反し、数多の蛇は炭から抜けてズルズルと這い、やがて一ヶ所に集まりだした。
今度のは大蛇じゃない、ごく普通(?)の大きさだ。
それらの蛇が互いに巻き付き、互いを喰らい、複雑に絡み合う。
粘液にまみれ、その粘液を接着剤とし、やがて、人の形に編み上がった。
霊体中に散りばめられた眼は、うんざりするほどギラギラとしていた。
最初のコメントを投稿しよう!