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宙を行く2本の鎖はうねりもせずに一直線、最短ルートで長の中に入り込む。
蛇の網目を掻き分けて、中で視付けた”同じ霊力”を持つ者達を、捕らえて離さずグルグル巻きにした。
その手応えを確かに感じて、僕は2本を思いっ切り手前に引いた。
ヒューーーーン……ゴチ!! ゴチン!!
「『『うわぁ!!』』」
まただ、今度は3回目。
僕と長澤さんと森木さん、3人はガチンコにぶつかって地面の上に転がった。
『助かったのか!?』
『えぇっとーーー!!!』
手練れ2人は顔面蒼白。
膝を着いた四つん這いの恰好で、顔をキョロキョロさせている。
「長澤さん、森木さん! 霊体は大丈夫ですか!? 溶けてるとか、どこか痛いとか、気持ち悪いとか眩暈とか、そういうのないですか!?」
僕は2人の霊体をしつこいくらいにチェックした。
負傷ヶ所がもしあれば、このまま流れで治したい。
『大丈夫、無事だ、』
『えぇっとー、無事です、はい!』
言うなり2人は立ち上がる。
その足取りは力強く、フラつきもないようだ。
「あぁ……良かった……2人共すみませんでした。僕、油断したんです。長がみんなを喰らうなら、口からだと思い込んでたんだ」
口と言っても、多分あそこら辺が口だろう……としか言えない容姿。
数多の蛇をギュッと編み込み作られた、ヒトを模した異形の霊体。
一応、足があり胴があり腕があり、頭があって顔もある……だからだろうな、喰らうなら、口と思しき所からと信じて疑わなかった。
そういう先入観は捨てなくちゃダメだ。
『なにが”すみません”なんだ? 霊を助けて謝るなんてオカシナ奴だな。まぁ、いい! そんな事より凄いぞ岡村! これで長の捕食を恐れなくて済む! あんの野郎……! メッタメタのギッタギタにしてやる!』
長澤工さん、享年41才。
短髪の筋肉質で男前。
”メッタメタのギッタギタ”、物騒なセリフだけども、今はすこぶる頼もしい。
『えぇっとー、工君が言った事、森木も全面的に同意します、はい。長なんてもう怖くないですよ。我々には希少の子がついています。……あんのヘビヘビ野郎……! メッタメタのギッタギタのバッキョバキョのブッチブチにしてやります! はいっ! ささ! 工君、行きますよ!』
薙刀を一振りさせて風を切り、森木さんは走り出す。
半拍後には長澤さんも『おうっ!』と答えて走り出す。
たった今、長に喰われたばかりなのに。
恐れる事なく戻って行った。
2人も僕を信じてくれてる、僕がいれば怖くないと思ってるんだ。
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