第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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長澤さんと森木さんが抜けてた間も、(おさ)との戦いは続いていた。 目線を投げれば、あらゆる武器が唸りを上げている。 苦内(くない)に大鎌、釘が打たれた極太こん棒、鎖鎌に巨大な斧、リアルを無視した威力爆上げデザートイーグル、息つく暇すらないスピードで(おさ)を攻め続ける。 そんな様子は一見、みんなが圧しているかのように視えた。 外側から、援護隊、第2班、斬り込み隊と、三重に囲まれたその中心で、(おさ)は集中攻撃を喰らっていたからだ。 だがおかしい。 (おさ)が一向に倒れない……かと言って反撃らしきもせず、なのだ。 あれだけの集中攻撃をぜんぶ避けているのか? 立ち位置が激しく変わる、みんなの霊体(からだ)の隙間から(おさ)を観察してみると…… うわ……なんだアレ……蛇で編まれた(おさ)霊体(からだ)は、激しく変化を繰り返していた。 『クソッ! ぜんぜん当たらない!』 苦内(くない)を投げた(かける)君が、舌打ちをして吠えた。 『コッチもだ! 銃が当たらねぇ!』 『オレの大鎌も避けられる!』 『避けられるというよりコレは……』 少年の言葉をきっかけに、みんなも次々愚痴を漏らし始めた。 その声には焦りの色が含まれる。 それでも諦めず、こん棒使いの高野さんが前に出た。 釘付きの極太を、両手で振り上げ蛇の霊体(からだ)に叩き込んだ……のだが。 こん棒は(おさ)の肩にヒットして、深く重く喰い込んだ。 やったか……! と喜んだのも束の間。 編まれた蛇が瞬時に解けて、そして再び編み始める。 その間、僅か数秒だ。 編み変えた(おさ)霊体(からだ)は……そう、(おさ)の、蛇の霊体(からだ)に違いは無かった。 だけど…… 『またか!』 高野さんが大きな声で独り言ち、眉間に深く皺を寄せた。 そして憎々し気にこん棒から手を離す。 手を離したこん棒は地に落ちる事無く……(おさ)の手に握られていた。 いつの間に奪ったか。 それはさっきの数秒だった。 数多の蛇がほどけ編み直される時、蛇の霊体(からだ)の各部位の、その位置が変わってしまう。 確かにこん棒が喰い込んでいた肩は、編み直されて今度は右手になっていた。 この調子なのだ。 胸に刺さるはずだった苦内(くない)も、腹を引き裂く大鎌も、全て奪われてしまう。
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