第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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武器での攻撃が無効化されてしまう。 (おさ)は何度も霊体(からだ)を編み変えた。 武器が霊体(からだ)にヒットする寸前か、遅くともヒットの次の瞬間には、数多の蛇がバラッとほどけ、瞬く間に編み直される。 そのせいで、苦内(くない)は掴まれ、大鎌は叩き落された。 鎖鎌は鎖を切られ、こん棒は奪われる。 薙刀は遠くへ飛ばされ、ノコギリはへし曲げられた。 ずっとこの調子なのだ。 まったくもって物理攻撃が通用しない。 ならばと、ポニテのいぶし銀こと中村さんが、蛇の霊体(からだ)を炎で焼き払おうと試みた……が、それも無効。 炎が(おさ)を呑み込む寸前、蛇はほどけて、四方八方散り散りになったからだ。 いなくなった蛇達は、どこかの陰に集まって、再び人の形を模した姿で現れた。 キリが無いな……これじゃあ、みんなの霊力(ちから)が無駄に削られる。 今の所、(おさ)からの攻撃はないが、間接的に攻撃を喰らっているようなものだ。 あ……もしかして……もしかすると、(おさ)はそれを狙っているのか? だとしたら厄介だ。 このままいけば霊力(ちから)は削られ、いつか底を尽くだろう。 (おさ)霊力(ちから)を削るつもりが、反対に削られているのだ。 マズイ展開だ……だけど……なんだろ……なんか引っ掛かるな、これって(おさ)らしくない攻撃だよ。 あの人……多分、派手な事が好きだ。 いや、近いけど少し違う。 派手な演出をして”自分の霊力(ちから)を誇示したいタイプ”の(ひと)なんじゃないのかな。 顔だけだった時もそう。 高圧的な態度、大きな声で威圧して、大袈裟な話し方をする。 聞いてもにないのに自分の話を延々とするんだ。 相手の気持ちに興味がなくて、いかに自分を大きく見せるか、そこに強く固執する。 だがら第二形態は大蛇だったんだ。 視た目は派手だしバカデカイし、プレッシャーを与えるのにピッタリじゃない(実際、僕はすごく怖いと思った)。 霊体中(からだじゅう)に生やした毒小蛇、空から降らせる多量の梵字、耳を(つんざ)く咆哮に、(おさ)コースター。 中村さんの炎に包まれて尚、復活した第三形態にしては視た目もやり方も派手さが足りない(派手の代わりに気持ちワルイけど)。 地道にコツコツ。 自分からは攻撃せずに、受けた武器を無効化してる。 こんなの……不本意なはずだ。 本当ならもっとド派手に誇示したいはずだ。 なのにしない。 これが何を意味するか。 つまり、僕やみんなが思う以上に、(おさ)霊力(ちから)は減っているって事じゃないのか? おまけにさ、僕がいるから捕食が出来ない。 霊力(ちから)の補充が出来ないんだ。 そう考えれば辻褄が合う。 これ、チャンスじゃないか? 中村さんの言う通り、再びチャンスが巡ってきてる。 ただ、蛇の霊体(からだ)の編み変えスキルが邪魔をするんだ。 だとすれば…………僕の頭に一つの作戦が浮かんだ。
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