第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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だがしかし、ハッキリ言って自信がない。 今の僕のスキルでは、悔しいけれどうまくいくか分からない。 失敗すればみんなに迷惑がかかる、実行するには勇気が必要だ。 決断できないまま時間が過ぎていく。 斬り込み隊と第2班に引き続き、援護隊の豪速石も無効化されて、それでも、みんなは諦めていなかった。 出来る事はなんだって。 武器が駄目なら体術だと、力士ライクな林さんが突進した……が、やはりこれも無効化された。 クソ……! ダメか……! 殴るにしても蹴るにしても、結局は物理攻撃だ。 拳や足があたる寸前、霊体(からだ)を編み直されてしまったら同じ事なのだ。 武器も拳も、(おさ)にとっては変わりがない。 ちらほらと、みんなに疲労が視え始めた。 ことごとく攻撃が通用しない。 霊力(ちから)を削られ、気持ちも削られ、焦る気持ちが蓄積される。 と、ここにきて突然、(おさ)が口を開いた。 『お前達には失望した、』 低くて、ザラついて、しわがれた声……なんだけど、気持ち悪……! (おさ)が一言発すると、霊体中(からだじゅう)の蛇達も連鎖した。 グワリと大きく口を開け、上顎と下顎は粘った糸が繋いでる。 喉の奥からシャーシャーと音を吐き、光る眼は真っ赤な血の色をしていた。 人の霊体(からだ)を模したてっぺん。 頭部と思わしその部位でも、顔面から小指程の細い小蛇がブワっと飛び出て、百の単位でウゾウゾと揺れていた。 口の中が苦くなる……胃液が上がる……嫌悪感でいっぱいになる。 これならさ、マジョリカさんの現場で視た、全身ブツブツ”巨峰野郎”の方が全然マシだ。 霊体中(からだじゅう)の蛇達は、首をしならせ口を大きく開けたまま、それゆえ粘った唾液が糸を引いて地に落ちる。 足元では液溜まりが出来る中、(おさ)は再び声を発した。 『飼い犬に手を噛まれるとは____私も見くびられたものだ、』 見当違いな嘆きに合わせ、顔の小蛇が一層激しく蠢いた。 17才の少年の『飼われてねぇよ、』という吐き捨てを、気にする様子はまるでない。 『だが、お前達はよくやってくれた、』 えっ……! (おさ)がみんなを……褒めた? 一般的には労いの言葉だ、だけど、それをそのまま受けとめられない。 何か裏があるはずだ。 僕が疑問に感じるように、いや、それ以上の疑問と動揺がみんなに走った。 ヒトと思わずコマと視る。 そんな(おさ)に、長年散々な目に遭わされてきたんだ。 信じる訳がない、裏を読もうとみんなは顔をしかめていた。
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