第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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(おさ)の真意がわからない、どういう風の吹き回しだ。 表情を読もうとしたって、顔を視れば数多の蛇が蠢いて、欠片だってわからない。 だが……ザラついた声は弾んでいる、それがなんとも不気味だった。 『褒めてやったのだ。もっと嬉しそうな顔をしたらどうだ。本当に、お前達は良くやってくれた。餌としての機能を果たしたのだ』 餌……? それ、みんなの事を言ってるのか? 失礼すぎる物言いに、腹の奥が煮えたぎるも、(おさ)に悪びれた様子は微塵もなくて、嬉々として話を続けた。 『(ここ)で____たくさんの駒を集めてきたのは、一つの目的があったからだ。お前達を暴れさせ、生者と死者に害を成し、(ここ)にはたくさんの悪霊がいるのだと、現世にも黄泉にも広める必要があったのだ。 悪評が広がれば愚か者がやってくる。私を滅そうなどと考える霊力者がな。だが雑魚に用はない。私が待っていたのは彰司だ。父が悪霊と化したと知れば、奴の性格上必ずやって来る。責任を感じ、私と、駒であるお前達を滅そうとする。来ればあとは喰らうのみ。彰司は死しても”希少の子”、相当の霊力(ちから)を得られる、』 この(ひと)……なにを言ってるんだ? 確かに生前、親子の間で色々あったのかもしれない。 それでも、瀬山さんは実の息子じゃないか。 それなのに、私欲の為に喰らうつもりでいたのか……? 喰らえば息子は無になるのに、それで良いと思っているのか? 最低だ……親としても人としても失格だ。 ああ……今ここに瀬山さんがいなくて本当に良かった。 そういう人だと(・・・・・・・)分かっているのかもしれないけど、こんなの、絶対に聞かせたくないよ。 『長かった……50年待った……そしてとうとう……彰司が来た……! 安い正義を引っ提げて、ノコノコ私を滅しに来たのだ! …………あぁぁぁああああぁぁぁぁぁああああああああああぁぁぁぁぁあああああああああっ!! 歓天喜地とはこの事! 彰司を喰らえば強い霊力(ちから)が手に入る、さすれば”瀬山の(おさ)”に返り咲ける、だが歓喜はそれだけに終わらない、1日遅れで彰司は生者を連れてきたのだ、岡村という生きた希少の子をな、私は彰司と岡村の魂を喰らい、生者の身体も手に入れる……なんたる幸運! 待った甲斐があった、”希少の子”が2人も揃ってやってきたのだから……! 天は我に味方した……!』
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